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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【ファンレター】日本の初代ビリー、未来和樹さまへ

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和樹くんビリーへ

 

最年長、15歳の和樹くんビリー。
ビリーたちの中では一番お兄さんと言っても、中学三年生の和樹くん。

和樹くんを実際舞台の上で観る前から、そのとても中学生とは思えないような、達観したような数々の発言に「すごいなぁ」と思いながら心の中で勝手に「和樹師匠」と呼んでいました(笑)

それでいて明るくてユーモアたっぷりでエンターテイナーな和樹くん。

ツイッターのタイムライン、ビリーたちへのインタビュー記事、テレビで放送されるビリーの特番…。それらを通して和樹くんの人柄に触れるうちに、和樹くんビリーは私の中でどんどん気になる存在になっていきました。

初めて赤坂ACTシアターでビリーを観た翌日に早速とった大阪公演のチケットを買ったときは、まだビリー役が発表される前でしたが、ビリー役が発表されて、私の日本初演ビリーを和樹くんのビリーで〆ることができると知ったときには、舞台の上で観たい気持ちがすごく募っていた和樹くんがマイビリー楽のビリーと知って「やったぁ!」と喜んだのを覚えています。

大阪で初めて会う予定だった和樹くんのビリー。

どうしても大阪まで我慢できなくて、9月に和樹くんビリーのチケットを追加したのは、9/3のソワレ後の藤岡さんトニーと中河内さんトニーのアフタートークイベントがきっかけでした。

トークイベントの中で、話題がトニーたちの各ビリーたちへの印象の話になったときの藤岡さんのお話。

正確な言い回しはうろ覚えですが、和樹くんに対しては

「一番プロ根性を感じる」
「声変わりや成長の恐怖と戦いながら
 毎回ビリーを一生懸命やっているのが、めっちゃ泣けるんですよ」

などと熱く語り始めて、司会をされていたTBSアナウンサーの方に「巻きでお願いします」とやんわりと怒られていたのがとても印象的に記憶に残っています(笑)

背中を押してくれる方の言葉もあり、9/3に劇場でリピーターチケットを買い足した直後なのにも関わらず、結局深夜に再度和樹くんビリーのチケットを買い足しました。その時の決断を後押ししてくれた方の言葉、藤岡トニーの熱いトークには感謝してもしきれません。

そうしてやっと和樹くんビリーに出会えた9/23のマチネ。それは、平日はビリー終演の時間帯でもまだ職場にいることが多い私にとって、東京で和樹くんのビリーを観れるラストチャンスでした。

結果的に最初で最後になってしまった和樹くんビリーのパフォーマンス。和樹くんは私の中のミュージカル俳優の理想をすべて兼ね備えている素晴らしい表現者でした。

終演後はもう本当にぼーっとしてしまい、乗る電車を間違えて降車駅で降りれずに引き返したりしながらも頭の中の胸の中もうまく言語化できない和樹くんビリーへの想いでいっぱいいっぱいになっていました。

もう、その日の公演は、益岡父ちゃんに小突かれながら嫌々連れてこられた和樹くんビリーが集会所に登場した瞬間から、私は和樹くんビリーに釘付けでした。(そしてこの嫌々感がすごくわかりやすい!)

集会所で炭鉱のみんなと一緒にいながらも、どこか心は故郷から遠く離れた場所にあるように感じる和樹ビリー。今思い返して考えてみれば、和樹くんビリーのその姿は、どこか無意識に亡くなった母ちゃんの姿を探し求めているように思えます。

おばあちゃんの昔話を聞いているときは、顔中が笑っているような太陽のようなニコニコ笑顔なのに、デビーに対して「母ちゃんは死んだ」という声は、ゾクッとするくらい暗い和樹くんビリー。

和樹くんのビリーは人一倍明るくて人懐っこいのに、母ちゃんが亡くなった事実が誰よりも濃い影を落としていて、その光と影の印影が鮮烈な印象を心に刻み込んでくるビリーでした。

和樹くんのAngry Danceはまさに魂の叫び声そのもの。

怒り、悔しさ、悲しみ、苛立ち…ビリーを取り巻くあらゆることに対する膨大な感情の爆発としか表現できません。

命を削る勢いで怒りを表現する和樹ビリー。

私はもうただただ圧倒されて、和樹ビリーが発するエネルギーに翻弄されていました。踊り終わって和樹くんが舞台の上に倒れこんだ後、客席全体が息をのんで和樹くんを見守っているのを全身で感じました。

あれほど身を切られるような痛みを感じて、自分の心まで削られていくように感じたAngry Danceはありません。

1歳の差があまりにも大きい10代の少年。

15歳の和樹くんが12歳のビリーを説得力を持って演じることは、すごくすごく難しいことだと思います。

きっと和樹くんはビリーがとる行動、発言のひとつについて、それは深く、深く考えた上で和樹くんなりのビリー像を作り上げ、それを舞台上で表現していたのではと思っています。

お芝居、ダンス、歌にのせた「和樹くんのビリー」の表現力のあまりの高さにそれはそれは感動しました。

和樹くんのElectricity。

和樹くんビリーのElectricityはビリーにとって「踊ること」がどういうことなのかを発見する旅でした。

「なんでそんなこと聞くんだよ、意味わかんないよ」といった風で不貞腐れながら答えながらも、「抑えきれない気持ち」という言葉にたどり着いて、表現する言葉を夢中で探し始めだすビリー。

「まるで電気」という表現にたどり着き、表情は踊ることを思い、喜びに溢れはじめ、自分の中にいっぱい詰まっている踊ることへの喜びを表現せずにはいられなくなり、ついには踊りださずにはいられなくなるビリー。

ひとしきり踊った後に「そう 電気…」と噛みしめるように、確認するように歌う和樹ビリーは本当に電気に打たれたように手が、体が震えていて…。

そんな和樹くんのビリーにとっての「踊ること」が和樹くんにとって「舞台でビリーとして生きること」に重なって思えて仕方がなく、私はただただ泣くことしかできませんでした。

5人のビリーたちに対して行われたインタビューで問われた
「『Dream Ballet』では14年後のビリーと踊っていますが、14年後の自分は何をしていると思いますか?」
という質問。

迷いなく「バレエです」と言い切った航世くんに対して、
「今はビリーのことだけで精一杯なので分かりません」
と答えた和樹くんの対照的な二人の回答がとても印象に残りました。

「ビリーとしての今を生きること」に全力なイメージがとても強かった和樹くん。それだけに、私が和樹くんのビリーを観たちょうど1カ月後の10/23に発表された和樹くんビリー大阪公演降板のニュースはそれはそれはショックでした。

楽しみにしていた和樹くんビリーをまた観れないのが寂しいという気持ちもあったのですが、そんなことよりもビリーとして舞台に立てない和樹くんの悔しさ、悲しさを想像するだけで胸が潰れそうで、和樹くんのことを考えながら何度も泣いてしまいました。

多分そういう人は私だけではなく、たくさんいるのではないかと思っています。きっと本当にたくさんの人が和樹くんのことを思い、祈り、涙を流したのだと想像しています。ビリーに全力な和樹くんの姿が、本当にたくさんの人たちの心を動かしてきた証拠だと思います。

みんな和樹くんのことが大好きなんです。

和樹くんのことを考えて泣いてしまう自分、そんな自分もありのままに受け入れて、今は心が赴くまま気が済むまで泣こう、と思えたのも日本版ビリーに出会えたことが大きい気がします。

和樹くんは自分の中のビリーと常に対話を続けている気がする、とツイートでも書きましたが、ビリーとの対話に限らず、和樹くんはその驚くべき感受性の高さで自分の周囲を取り巻く激流のような情報、人の感情に対して深く考えを巡らせることができる本当に稀有な人だと強く感じています。

とても内省的でありながらも、明るくて社交的な和樹くん。

人の痛みがわかり、愛情を受けてそれを返すことができる和樹くんは本当に本当に素敵な人で、私は和樹くんの倍は軽く生きているいい年をした大人ですが、和樹くんの人柄と表現者としての才能にはひたすら憧れてしまいます。

和樹くんのビリーを観ることができたのはたった1回だけですが、舞台上で全力疾走でビリーとして生き、輝いていた和樹くんを観る奇跡に立ち会えたことは私の誇りです。

もしかしたら、ずっと痛みに耐えながらもそんなことを微塵も感じさせずにあんなに素敵な舞台を見せてくれていたのかもしれないと思うと、本当にただただ頭の下がる思いです。

本当に素敵な舞台をありがとうございます。
日本の初代ビリーになってくれてありがとう。
大好きです。

どんなときにも 心のままに
あなたらしく生きて

これからも応援しています。