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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】ミュージカル『エドガー・アラン・ポー』(에드거 앨런 포, Edgar Allan Poe) @ BBCH Hall, Seoul《2017.11.25-2018.1.27》

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 2016年の韓国初演でハマり、初演に引き続き好きな俳優様たちがキャスティングされたことによって楽しみにしていた2017-2018年のミュージカルエドガー・アラン・ポー』(에드거 앨런 포, Edgar Allan Poe) の再演。このミュージカルはアメリカを代表する詩人であり、世界初の推理小説を書いたとされるエドガー・アラン・ポーの作品とその波乱万丈の人生を描いたミュージカルです。元々は故 Eric Woolfson がミュージカル化を念頭にコンセプト・アルバムとして発表した作品で、 Steve Balsamo さん主演、ポーと確執のあった詩人であり牧師のグリスウォルド役に David Burt さんを配役したショーケースが映像化されて残っています。このショーケースからかなり大胆に脚色を加え、楽曲も追加して、ストリーラインを強化した韓国版の初演。きっと再演では更に色々と変えてくるだろうなぁと予想していましたが、予想通り楽曲追加や振り付けの一新、ストーリー展開にも手が加えられ、新しい韓国版『エドガー・アラン・ポー』として戻ってきました。

  初演ではポー、グリスウォルドがトリプルキャスト、ポーの人生に深く関与する女性たちとグリスウォルドの小間使いのレイノルズがダブルキャストでしたが、今シーズンはポー、グリスウォルドに配役された俳優様がそれぞれ4人ずつのクァッドキャスト。ポーの若き日の恋人のエルマイラ役がトリプル、ポーの母親エリザベスがダブル、ポーの従姉妹で幼妻のヴァージニアとレイノルズがシングルキャスト、とキャスティングのされ方も大きく変わりました。ポーのキャストは初演から一新。グリスウォルドは初演からの再起用が二人、ニューフェイスが二人。初演でグリスウォルド役を演じたユン・ヒョンリョルさんがポーを、エリザベス役を演じたアン・ユジンさんがエルマイラ役に役替わりしたことも話題に。

 私が今季のポーを観た日程とキャストについては下記の通りです。

  1. [2017.11.25 ソワレ]
     ポー (포, Poe) : ユン・ヒョンリョル さん
     グリスウォルド (그리스월드, Griswold) : チェ・スヒョン さん
     エルマイラ (엘마이라, Elmira) : ナ・ハナ さん
     エリザベス (엘리자베스, Elisabeth) : ホ・ジナ さん
  2. [2017.12.30 マチネ]
     ポー : ユン・ヒョンリョル さん
     グリスウォルド : チョン・サンユン さん
     エルマイラ : チェ・ウリ さん
     エリザベス : ユ・ボヨン さん
  3. [2017.12.31 マチネ]
     ポー : ユン・ヒョンリョル さん
     グリスウォルド : ペク・ヒョンフン さん
     エルマイラ : アン・ユジン さん
     エリザベス : ホ・ジナ さん
  4. [2018.1.27 マチネ] (写真はこの日のキャスト)
     ポー : ユン・ヒョンリョル さん
     グリスウォルド : ペク・ヒョンフン さん
     エルマイラ : ナ・ハナ さん
     エリザベス : ホ・ジナ さん


 私のブログを初めて読む方にも私の贔屓の俳優さんが誰かすぐわかりますね。わかりやすく偏っていてすみません(笑)別の方のポーも観てみたかったんですが、枠が足りず…。個人的は大晦日に観たキャスト一番好みだったので、この組み合わせの公演を中心に感想と、初演と再演の違いについて書いてみたいと思います。

(以下、ネタバレが多く含まれていますのでご注意ください)

 

 

 まずは、プレイガイドに掲載されているシノプシスを翻訳したものをご紹介します。

主よ、私の哀れな魂を取り立ててください

 一世紀を先取りしていった天才であり、呪われた詩人、エドガー・アラン・ポー
彼の真の愛、試練、孤独そして彼の花火のような人生と作品を語る

 貧困と神経衰弱を伴ったまま、幼い頃の母の死、初恋との辛い別れなど寂しく暗い人生を生きた若い無名作家のエドガー・アラン・ポー。ある日、雑誌社の社長の要請を受けて、ライバル作家グリスウォルドの新しい作品についての批評を書くことになり、それに憤怒したグリスウォルドは彼の助手レイノルズに指示し、ポーの不遇な人生に対する情報を入手したのち、彼に復讐することを決心する。一方、ポーは病弱な従姉妹のヴァージニアに恋心を抱いて彼女を心配し、彼の一生の力作を書くようになる。この時、グリスウォルドはポーを支援するふりをしてポーの雑誌社を自分のものにし、彼の新しい詩《大鴉》(The Raven)を朗読し、物笑いにするつもりがこの詩が大きな賛辞を受けると更に憤怒することになる。

 ポーがヴァージニアと結婚して5年後、妻の健康が急激に悪化し死にいたると、彼はこの上ない悲しみに陥り、この隙に乗じてグリスウォルドはポーの作品と名声を崩すための計略を立てるが...

 

 
 前述の通り、再演にあたり色々と手が加えられた『エドガー・アラン・ポー』ですが、基本的な物語の流れに関しては初演とそこまで変わっていません。批評家、ミュージカルファンの間でのこの作品の初演の評価は「音楽はものすごくいいしかっこいいけど、ストーリーが微妙」で概ね一致していました。私も似たような感想で、「楽曲は超絶かっこいいし、難曲を歌いこなす俳優さんたちは素晴らしい。でも台詞だけの場面がダレがちで、展開が急に感じたりと話の展開に難あり。でも、なんだかよくわからない魅力と熱量がある。あと、腐女子貴腐人 のみなさまが超好きそう (←)」といったように感じていました。

 最後の感想の部分でピンと来た人もいるかもしれませんが、韓国版の『エドガー・アラン・ポー』はポーとグリスウォルドの確執と対立関係に大きく焦点が当てられた演出と物語に変更されていて、ショーケース版と比べてグリスウォルドの役回りがかなり大きくなっています。初演版はこの二人の関係を軸としたストーリーラインに比べて、ポーの人生に大きな影響を与えた女性たちとの関係の描写が弱かった印象がありました。(前者があまりにも強烈すぎた、という気もしなくもないですが)再演は、その部分にテコ入れと思われる変更が何点か入ってました。

ヒロインの存在感が強化されたよ

 それを一番象徴する変更点だと思うのが、エルマイラが歌う新曲「A Dream Within a Dream」(꿈 속의 꿈) とその直前に展開されるエルマイラとグリスウォルドが直接対峙するシーンの追加。上で紹介したあらすじには名前すら登場しないエルマイラですが、再演のポーでは彼女がかなりのキーパーソンになっています。

 ポーとエルマイラは二人の関係を快く思っていないエルマイラの父親によって仲を引き裂かれます。その背後にグリスウォルドの手引きがあったという演出は初演からなのですが、再演ではグリスウォルドの存在を明確に意識した上でその予兆をエルマイラが感じ取って不安に思っており、ポーに駆け落ちの相談をしたり。結果として二人が別れること自体は変わらないのですが、アン・ユジンさん、ナ・ハナさんのエルマイラの場合は、ポーに危害を加えようとする彼女の父親の手先からポーを守ることを条件に、彼女自身がポーの元を去る決断をしたような演出になっていたり。(チェ・ウリさんだけは何故か衣装なども含めて初演のエルマイラに近い役作りで強制的に連れ去られるような演出でしたが)エルマイラは「ポーが守れなかった女性」なのではなく「ポーを守った女性」なのだと考えると、色々と違った見方ができるような気がするのです。

 「不気味でおどろおどろしいけど、不思議と惹きつけるものがある」というのが私のポーの著作に対するイメージですが、彼が書いた作品には《アナベル・リー》のようにロマンチックな作品もあるわけで。ポーが《アナベル・リー》を書くきっかけとなったミューズとなったのがエルマイラで、彼女と引き離されることにより失ったインスピレーションの源泉を埋めるために彼は酒やドラッグに手を出し始める。でもそれは彼女の庇護とは対極の性質を持つもの。その影響でダークな世界観がポーの創作につきまとうようになり、さらに大切に思っていたヴァージニアが常に死と隣り合わせで暮らしていたことがその作風に影響を与えてきたと考えることができます。エルマイラがポーの創作の最初で特別なミューズだとしたら。彼女がそもそもポーを守るために彼の元を去ったのだとしたら。そう考えると妻を亡くした失意の中にあるポーの元にエルマイラが訪れ、彼女に励まされることによってポーが再び筆を取ろうとしたことにもすんなり納得ができます。

 まあ、単純に初演はヴァージニアの死からポーとエルマイラの再会のシーンの間があまりにも短くて、そこに件のエルマイラとグリスウォルドのシーンと新曲が挟まったことで「うわっ、変わり身早っ!!!」感が緩和されたと言えばそれまでかもしれないのですが(爆)エルマイラとヴァージニアに関しては正直、初演を観たときは「せっかく実力のある女優さんたちをキャスティングしているのに、ポーとグリスウォルド以外の印象がめっちゃ薄くてなんだかもったいない使い方だなぁ」と思っていたので、この再演の変更点は好きでした。あくまでミュージカルの中でのお話ですが、ポーの作品にダークで背徳的な雰囲気が漂うになったきっかけがエルマイラと引き離されたことにあるのなら、グリスウォルドが忌避していたその作風に彼自身が一役買っていたことになるので、そのほうが面白いなぁとも思ったり。そしてアン・ユジンさんのエルマイラ、かなり好きです。「Somewhere in the Audience (Reprise)」(관객석 그 어딘가 [Reprise]) で泣いてしまったのは完全にユジンさんのエルマイラからの貰い泣き。この場面で泣くとは全然思っていなかったので、自分でもちょっと驚きました。

でもやっぱり主軸はポー VS グリスウォルド

 再演ポーでは、チェ・スヒョンさん、チョン・サンユンさん、ペク・ヒョンフンさんの3人のグリスウォルドで観ることができました。スヒョンさんのグリスウォルドは一番大人。観る前はもっと良心の矍鑠に思い悩むタイプの牧師様を想像していたのですが、思いの外最初から黒い腹黒牧師様でした。サンユンさんのグリスウォルドは、初演の時から印象は変わらず、「なぜ一番聖職者にしてはいけないこの人が牧師をやっていらっしゃるんでしょうか...」という突き抜けた極悪人のグリスウォルド。生臭だし、エロいし、自分が真っ黒であることを明示的に自覚しながらも嬉々としてポーを潰しにかかっていく悪代官様のような牧師様でした。スヒョンさんとサンユンさんのグリスウォルドの共通点は、両方ともかなり上から目線で、生意気で調子に乗っているポーが気に入らないから潰す、という雰囲気でしょうか。サンユンさんのグリスウォルドに関しては、《大鴉》の朗読を聴き終わった後でも、一ミリたりともポーより自分が劣っているとは考えてなさそう。なので、「The Pit and the Pendulum (Reprise)」(함정과 진자 [Reprise]) の「私の神よ、私を捨てられるのか」という呼びかけもどこか白々しくて、「悪魔が与えた才能」云々の件も自分に都合のいい大義名分を並び立てているような印象を受けます。

 対してヒョンフンくんのグリスウォルドですが...黒い牧師様であるのは変わらないのですが、だいぶ趣きが違います。最初に白状してしまいますが、わたくし、ヒョンフンくんのグリスウォルドが大好きです。控えめに言って最高です。自分が足掻いてもどうしても手が届かない存在に対してどうしようもなく焦がれて執着して、でも報われないヒール役が大好きなのですが、ヒョンフンくんのグリスウォルドはそのど真ん中ストライクなのです。スヒョンさんもサンユンさんも良かったんですが、ヒョンフンくんのグリスウォルドがあまりにも好みすぎました。

 確固とした自分の理想を掲げている若いエリート活動家、というのがヒョンフングリスウォルドのイメージで、きっと彼はなんでも卒なくこなしてきて挫折知らず。そんな彼の人生に初めて登場した全く思い通りにならない障害物がポー。優等生然としていても理想のためには手段を選ばないので、あの手この手を使って問題の芽を軽く摘む予定だったのに、その過程の中でポーが自分とは別次元にいる天才で、その作品に自分がどうしようもなく惹かれていることに気づいてしまう。ポーとその作品はグリスウォルドが理想とする清く正しく美しい文壇や文学には存在してはならないはずなのに。

 《大鴉》をポーが朗読している最中のグリスウォルドの挙動は私が作品の中でも注目して見てしまうポイントです。スヒョンさんとサンユンさんのグリスウォルドは、思わずポーの詩に聞き入ってしまっているレイノルズを睨んだり、頭をはたいたりといった反応なのですが、ヒョンフンくんのグリスウォルドはさらにそのレイノルズを横に押しのけて自分自身がポーを凝視しながらその作品に引き込まれずにはいられない、という演技で。ヒョンフンくんのグリスウォルドを初めて観た2017年の大晦日の公演にいたっては、ポーが《大鴉》を詠み終えて、「It Doesn’t Take A Genius」(내 눈앞의 천재) の曲に移った瞬間にはっきりと視認できるぐらいの大粒の涙をボタボタと流していて、曲の前奏の間も自分の身の上に一体何が起きたのか理解できないというのがありありと伝わってくる茫然自失とした表情でうつむき、壊れたように流れ出てくる涙を拭いながら自分を落ち着かせるためかのようにうろうろと歩きまわっていて。さらにその後の「The Pit and the Pendulum (Reprise)」では、牧師の黒いロングコートを舞台中央で脱いでから歌い始めて。黒いコートがグリスウォルドの深層心理を覆って隠すために着込んだ鎧で、それをかなぐり捨てて自分の心情を吐露しているようで。ね、控えめに言って最高じゃないですか?!

 自分の正義、理想の清く美しい文学のために全力でポーを潰しにかかるヒョンフン牧師様ですが、その執着の強さには世界からポーとその作品を抹殺することにより、ポーとその作品を自分だけのものにしたいという暗い願望が見え隠れするように感じる狂気もすばらしく。ポーを陥れるための行為がエスカレートしていくにつれて爛々と輝く目とか、ポーを陥れるために汚した手を恍惚と見つめて唇を寄せる姿とか、ゾクりと寒気すら感じるぐらい邪悪な妖気を放っているのです。自分の奥底に隠れている願望にいまいち無自覚なのにそれが表出してしまう感じなのがまた…。手を天にかざして仰ぎ見て、自分に与えられた「正義のための使命」を再確認しているように感じる姿も印象的ですごく好きでした。

主役「エドガー・アラン・ポー

 そしてタイトル・ロールのユン・ヒョンリョルさんのポー。前述の通り、ヒョンリョルさんは初演ではグリスウォルド役で出演していました。ヒョンリョルさんのグリスウォルドは、ヒョンフンくん同様に私が大好きな「焦がれて執着して、でも報われないヒール役」。そこからの「焦がれて執着される」側の天才役への転身です。

 ヒョンリョルさんのポーは、神経質で内省的な芸術家というよりは自分の中の心象風景を外に向かって発信せずにはいられない永遠の少年というイメージ。「Wings of Eagles」(매의 날개) では、「俺にはこんな興味深い世界が見えてるんだ」と目を輝かせて歌い、自分の世界観の素晴らしさに共感してもらえることに対する絶対の自信に満ち溢れています。幼い頃に母を亡くしてはいるけど、守護天使のようにその存在を身近に感じて育った変わり者だけど明るい青年。調子に乗りやすいし、打たれ弱いし、甘えただし、好きなことしかしたくないと駄々をこねる間違いなくだめんずに分類されるダメ男なのですが、優しいし、愛嬌があって憎めない魅力があって、エルマイラやヴァージニアのように「私が側にいてあげなきゃ!」という女性を量産しているのが容易に想像できる、絶対友達にはおすすめできないタイプ。エルマイラと歌う「Blinded by the Light」(눈이 멀었죠) は蕩けそうなくらい甘いし、「The Murders in the Rue Morgue」(모르그 가의 살인사건) 中でアンサンブルキャストの中から顔を覗かせながら客席の様子をうかがったり、決めポーズをあーでもない、こーでもないと考えている姿とか、本気でファンを殺しにかかってきているとしか思えない可愛さです。ヒョンリョルさんは今までこういう役柄の役をあまり演じていなかったと思うんですが、意外とこのポー役がご本人の素に近いのではとも思ったり。とういうか、こういうの結構お好きですよね?...書いていてなんだか自分に向かって帰ってくるのがわかる巨大ブーメランを投げているような気がしてしょうがないですが、気づかなかったフリをして続けます。(←)

 ポーが作中で歌う曲は、超絶かっこいいけど歌い手泣かせの難ナンバーばかり。それを軽々と歌いこなせてこそポーのカリスマ性に説得力が出ると思っているのですが、そういう意味では全く申し分なし!伸びやかに「Wings of Eagles「Immortal」(영원) を歌い上げるヒョンリョルポーは本当に気持ちよさそうで、心の底から楽しんで歌っているのが感じられて。「The Pit and the Pendulum」も余裕のシャウトでめちゃくちゃかっこいい。「Somewhere in the Audience」ではもちろん涙をボロボロ流しながらそれはそれは悲しそうに歌ってくれるし、「The Raven」(갈가마귀) のラストでも涙が薄っすらと浮かんでいて。でも正直なところ、ヒョンリョルさんのポーは繊細で感受性の高さや不憫さ (←) は抜群でも、あの不気味でダークな世界を創造した天才というイメージはちょっと薄いかなあ…という印象なので、世間一般の「エドガー・アラン・ポー」像とはかなり違うとは思うのですが、人を惹きつける魅力をもった人物としての説得力を感じる役作りでした。 

 少しこのレポートを書いていて思ったのですが、ミュージカルの楽曲としては韓国版で追加された「The Ravenを含めて、ポーが歌う楽曲はダークな雰囲気の曲はあまりなく、どちらかというとポーの創作を元にしたダークな雰囲気が漂う楽曲はグリスウォルド側に寄せられています。ポーとグリスウォルドの二人でポーの作品の二面性をそれぞれで表していると考えてみるのも面白いかもしれません。

 その解釈が一番しっくりくるのがポーの詩の同名の詩をもとにした「The Bells」(종) というナンバー。英語版の歌詞はそのまんまポーの詩を歌詞として採用しています。アンサンブルの重厚なコーラスに加えてグリスウォルドのソロ部分と、アンサンブル部分に被せたラストのロングトーンがめちゃくちゃカッコいいナンバーです。初演からめちゃくちゃカッコよくて好きなナンバーでしたが、再演ではグリスウォルドの高音のロングトーンに加えて、ポーの絶叫のシャウトまで加わってさらに大迫力。本当に鳥肌ものでした。

 ヒョンフンくんのグリスウォルドが単体でも大好きなことはすでに力説していますが、組み合わせの相性を考えた場合でもヒョンリョルさんとヒョンフンくんのペアが今シーズン観たポーとグリスウォルドの組み合わせでは一番好きでした。ヒョンリョルさんが初演で演じていたグリスウォルドとヒョンフンくんのグリスウォルドにどこか相通ずるものを感じるからかもしれませんが、なんというか、この二人に関しては根底にある美しいものに対する意識が実は似ているんじゃないのかな、と思えるんですよね。そしてヒョンフンくんはポー役も絶対似合うと思うので、立場が反転したバージョンもめっちゃ観てみたいなぁ妄想してみたり...。再演したときは日替わり役替わりで演ってくれないかな… 。

 初演の不満がすべて解消されたわけではないですし、初演の方が好きだったなぁという部分もあったミュージカル『エドガー・アラン・ポー』の再演なのですが、こうやって感想をレポートにまとめて書いてみると思うのは、それでもやっぱりこの作品は魅力的な作品だな、ということ。それでもミュージカルナンバーの難易度からして、キャストを問わずに必ず観たいと思えるかと聞かれるとそうとは言い切れないので、初演、再演と続けて好きな俳優さんたちで観れて本当に幸せなことだと思います。願わくば、さらなる再演のときもそうでありますように…。