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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】ミュージカル『ノートルダム・ド・パリ』(노트르담 드 파리, Notre-Dame de Paris) @ Sejong Center Center for Performing Arts, Seoul《2018.6.23ソワレ》

2018/6/23 ソワレ ノダムキャスト

 ソウルと私の熱い夏がはじまりました。ということで『レッドブック』で通ったのでそこまで久しぶり感はない世宗文化会館の今度は大劇場のほうで韓国版フレンチ・ミュージカルノートルダム・ド・パリ(노트르담 드 파리, Notre-Dame de Paris, 以下ノダム) を観てきました!待ちに待った本陣様、ユン・ヒョンリョルさんの半年ぶりの舞台!そしてずっと観たいと思っていたヒョンリョルさんのデビュー役のカジモド!韓国版ノダムは10周年記念公演ということでかなり豪華なキャストの顔ぶれ。6/23ソワレのキャストはキャスト・ボードの写真の通り、

 カジモド (Quasimodo):ユン・ヒョンリョルさん
 エスメラルダ (Esmeralda):チャ・ジヨンさん
 グランゴワール (Gringoire):チョン・ドンハさん
 フロロー (Frollo):チェ・ミンチョルさん
 フェビュス (Phoebus):チェ・スヒョンさん
 クロパン (Clopin):パク・ソングォンさん1
 フルール=ド=リ (Fleur-de-Lys):ハム・ヨンジさん

でした。

 ヒョンリョルさん以外のキャストでこの日特に楽しみにしていたのはエスメラルダ役のチャ・ジヨンさん!奇しくもヒョンリョルさんと共演されたコンサートでジヨン姐さんのあまりの男前っぷりに惚れて以来、韓国のミュージカル女優さんの中で一位二位を争うくらい好きな女優さんです。

 ミュージカル自体がフレンチ・ミュージカルの代表的な作品ですし、原作もあまりに有名なユーゴーの同名の小説なのでもはや説明不要な気もしますが、ざっとミュージカルのあらすじを紹介します。(以下、ネタバレありなのでご注意ください)

あらすじ

 吟遊詩人のグランゴワールは自身が見聞きした「欲望と愛の物語」として15世紀のパリ、ノートルダム大聖堂で起きた出来事を語りだす。クロパンをリーダーとする流浪の民たちはパリに到着し、つかの間の滞在地としてそこで過ごすことにする。ジプシーたちの存在を快く思わない大聖堂の司教補佐2フロローは、教会の権威と王室射手隊隊長のフェビュスを使い、ジプシーたちをパリから追い出そうと企てる。そんな中、フェビュスはクロパンが庇護するジプシーの若く美しい娘エスメラルダに心奪われる。しかし、フェビュスにはフルール=ド=リという貴族の令嬢の婚約者がいた。

 一方、せむしで醜いノートルダムの鐘つき男のカジモドはフロローに拾われて以来ずっと大聖堂の中で暮らしていた。主人としてフロローを純粋に慕うカジモド。ある日、カジモドは大聖堂ので開催されていたジプシーたちの「道化の祭り」の騒ぎに惹かれて様子を覗いていると、「道化の法王」としてジプシーたちに担ぎ上げられる。「道化の法王」として王冠をエスメラルダから受け取ったカジモドは彼女に心惹かれるが、「彼女のような美しい人は自分などは見向きもしないだろう」と考える。しかし、エスメラルダに興味を示したのはフェビュスとカジモドだけではなかった。教会の厳しい戒律により妻を娶ることができないフロローも美貌のジプシーの少女に魅了されていたのだ。

 妖しい魔女として捕らえるため、エスメラルダを誘拐してくるようにカジモドに言いつけるフロロー。主人に忠実なカジモドは、言われた通りにエスメラルダを連れ去ろうとするが、夜警に当たっていたフェビュスによってその企みは阻まれる。窮地を救った若く精悍なフェビュスに惹かれていくエスメラルダ。カジモドは誘拐犯として捕まり、衆目の前で拷問を受けることになってしまう。水が欲しいと懇願するカジモドに、願い通り一碗の水を与えたのは攫われそうになったエスメラルダ本人だった。エスメラルダの優しさに触れ、カジモドもエスメラルダに想いを寄せていくが...。

感想

 感想を書き出す前に、少し断っておかないといけないかなぁと思っていることがあります。実は私フレンチ・ミュージカルがちょっと苦手です…。どちらかというと演劇要素の強い作品が好みな私は、ノダムのように「ダンスもアクロバットも盛りだくさん!歌ウマの歌唱力をこれでもかというくらい堪能したまえ!!」という作品はそこまで積極的に観てきませんでした。が、しかしそこは本陣様の出演作!しかも先述の通り、本陣様がデビューをされた記念するべき作品と役!しかも10周年!他のキャストも好きな俳優さん揃い!観ないわけにはいかない!不可抗力!歌ウマの歌声浴びすぎの歌酔い上等!そんな気持ちで挑んだ観劇でした(←)

 そして観劇中の幕間の感想ツイート。

はい、もはやこれを感想と呼んでいいのか怪しいレベルですね。(←あかんやろ)

 なんか自分でもちょっと意外なのですが(←)、歌ウマの歌唱力ビームを浴び続けたのにも関わらず今回は全体を通して歌酔いしませんでした。前回観たときは「みんな本当に歌上手くて凄いけど、すみません、もう、もう、お腹いっぱいです。ぐったりです...。」ってなったのに。不思議。

 まず、クロパンのパク・ソングォンさんがめっちゃかっこいい。一目でリーダーとわかる存在感に男らしくてどっしりと構えた余裕のオーラ。そしてスヒョンさんのフェビュスがエロい。そしてゲスい。(褒めてます)ミンチョルさんのフロローはこじらせ聖職者なのに相変わらず魅惑の素敵さ。これはフロローが素敵というよりはミンチョルさんが素敵すぎるんやな。やっぱりええ声や。好き。ジヨンさんのエスメラルダは魅惑の美脚でめっちゃ艶やかなのにすごく無邪気でかわいいし。好き。あんな男となんてお母さん許しませんからね!だけどクロパンが倒れてからのその意志を引き継いでジプシーたちの先頭に立っているように感じる力強さと凛とした雰囲気はやっぱりさすがジヨン姐さん!

 しかし。だがしかし。やっぱり大本命はカジモド!ヒョンリョルさんのカジモド!ヒョンリョルさんのカジモド!なんなんですか、あのかわいい生き物は!ちょっと首を傾げ気味に斜めに立っているだけでかわいい。ちょっかいをかけてくるジプシーたちに怯えながらもお祭りを羨ましそうに、楽しそうに覗いている姿。フロローを主人として慕う純粋さ。ミンチョルフロローが投げやりに差し出した手に頭をすり寄せて撫でられに行くところ、萌え禿げた。カジモド仕様でいつもと歌い方は結構違うけど、やっぱり声が大好き。歌声を聞けて全身が喜んでいる。やっぱり好き...(*´꒳`*)

 カジモドが純粋でかわいければかわいいほど、可哀想で不憫に思う場面も本当に多くて。そんな中で一番ほっこりとした気分になれる、大聖堂にやってきたエスメラルダをカジモドが歓迎するカジモドとエスメラルダのデュエットの「僕の家はあなたの家」(내 집은 그대의 집, Ma Maison C'est Ta Maison) はもしかしたら一番ノダムで好きなシーンかもしれないです。はにかむカジモドに対して弟のように接するような感じのジヨンさんのエスメラルダが本当に優しい表情で。こっそりと祈るエスメラルダを覗き見ているヒョンカジもかわいいし。同じような理由で「聖堂の鐘」(성당의 종들, Les Clouches) も好きです。推しがしあわせそうな表情しているのって本当に素晴らしいですね!


2013年の公開ラジオ放送で「僕の家はあなたの家」を歌うユン・ヒョンリョルさん、パダさん

 だけど、やっぱりカジモドの純真な姿を語る上でやっぱり外せないのは「踊って エスメラルダ」(춤을 춰요 에스메랄다, Danse Mon Esmeralda) が歌われるラストシーン。

많은 세월이 흐른 뒤
多くの年月が流れた後
그들은 찾겠지
彼らは見つけるだろう

끌어안은 채 썩어간
抱きかかえたまま朽ちていった
두 사람의 뼈를
二人の骨を

슬픈 콰지모도 그가
悲しきカジモド 彼が
에스메랄다를 얼마나
エスメラルダをどれだけ
애타게 사랑했는지
心焦がれて愛したか

저주받은 그 영혼이
呪われたその魂が
어떻게 사랑했는지
どのように愛したか

 舞台映像の動画で見ているだけではわからなかった本当の本当の最後のカジモドの動作に、それまでもぐずぐず泣いていたけどさらなる涙の波のスイッチがオンに。ぜひともこれからノダムをヒョンリョルさんのカジモドで観る予定のある方は、舞台が完全に暗転にする最後の最後までカジモドの動きにご注目ください。 本当にヒョンリョルさんのカジモドには幸せになってほしいなぁと思うけど、それが君の幸せだというならもう私は何も言わないよ...(T_T) ちなみにこのラストシーンが描写されている原作の終章は「カジモドの結婚」という名前が付けられているらしいです。
 嗚呼...。・゜・(ノД`)・゜・。


2018/5/25 のStage Big Pleasure で「踊って エスメラルダ」を歌うヒョンリョルさん
(舞台映像ではないですが、最近の動画だし、かなり役に入って歌ってくれてるのでお気に入り)



[2018.6.29 追記]

 フォロイーさんのヒョンリョルカジモドの感想ツイートを読んで、自分の中のヒョンリョルカジモド像がストンと腑に落ち、「これだ!」と思う表現を見つけられて書きたくてウズウズしすぎたので追記

 ヒョンリョルさんのカジモドを一言で表すなら「無垢」。本当に幼い子供みたいに大聖堂の外の世界に憧れつつ怖れている。その純粋な幼さゆえにフロローに向ける感情も、自分を拾って育ててくれたことに恩義を感じているというよりは、子供が自分の親を恋い慕う感情のそれと限りなく近いとても純粋な好意。だからこそあんなに笑顔はあどけないし、悲しみや怯えの感情もとても混じりけが無い。ここまでカジモドが純粋だと、育ての親のフロローも本質的にはとても善良で優しい人間なのではと思えてくる。エスメラルダに対する恋情も、小さな男の子が幼稚園の先生を大好きになるそんな初恋にとても近いものを感じる。そんなカジモドが唯一複雑な感情を見せるのが、ラストのエスメラルダが絞首刑にかけられてからフロローを突き落とすまでの間。カジモドは親と初恋を同時に永遠に失い、大人になるのを拒否するように二人を追ってその短い生を終えたと考えると、本当に切なくて不憫で本当に堪らない…。


 
 手持ちのノダムのチケットは後3回分。これから観る予定のマイケルさんとジェリムさんのグランゴワールもとても楽しみ!今の所、ソウル公演しかチケットを取っていませんが、ノダムは地方公演なんかもあったりするので、気がついたら遠征をしている自分がいたら笑い飛ばしてやってください(←)


  1. 【2018/7/25 修正】ソングォンさんのお名前の表記が間違っていたため訂正しました。大変失礼いたしました。

  2. フランス語ではarchidiacre、英語ではarchdeacon. 現在は廃止されたカトリックの聖職者の階級で、司教と司祭の間の地位にあたるらしいです。カトリックでは司教以上は基本的に妻帯を認められていないようです。