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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】演劇『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(나미야 잡화점의 기적) @ DCF Daemyeong Culture Factory, Seoul《2018.9.8マチネ》

 観劇目的で韓国に遠征しはじめてからはや3年。韓国ミュージカルの魅力に取り憑かれるように渡韓回数を重ねていましたが、言葉の壁の前に躊躇してずっと手を出していなかった演劇。そんな中、元々演劇中心に活動されている推し俳優さんのホン・ウジンさんが東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(나미야 잡화점의 기적) の舞台版に出演するとのニュース。「『ナミヤ雑貨店の奇蹟』なら原作の小説を読めば話の流れを予習できるし、これは演劇デビューする良いタイミング!」と思い、ついに韓国で初めて演劇作品を観劇してきました。記念すべき私の韓国演劇デビューの公演のキャストのみなさまは下記の通り。

 浪矢雄治:チェ・ジンソクさん
 敦也:ホン・ウジンさん
 幸平:カン・ヨンソクさん
 翔太:チェ・ジョンホンさん
 水原セリ:チョン・ソンミンさん
 松岡克郎キム・ジョンファンさん
 皆月良子:ハン・セラさん
 皆月暁子:ホン・ジフィさん
 浪矢駿吾:リュ・キョンファンさん
 浪矢貴之キム・スンヨンさん

 ナミヤ雑貨店のオーナーの浪矢雄治、敦也、幸平、翔太の三人組以外のキャストのみなさんは一人で複数役を演じます。個人的にはキャストボードに書かれている役名よりこっちの役のが印象的だったんだけどなぁという俳優さんもいますが、キャストボード記載の役名に準拠して書いてみました。playDBにすべての配役が書かれていたので、興味がある方はこちらをどうぞ。

 まずはインターパークに掲載されている作品のあらすじをご紹介します。

今夜、ナミヤ雑貨店の相談窓口が復活する――。

2018年9月、コソ泥の敦也、翔太、幸平がナミヤ雑貨店と書かれた古い店に隠れていると、店の入り口の隙間から「魚屋ミュージシャン」と名乗る者からの手紙が届けられる。彼らはそこで見つけた古い雑誌に載っていた、悩み相談で人気のナミヤ雑貨店を経営する浪矢雄治のインタビュー記事を目にする。

いたずら心から魚屋ミュージシャンの手紙に返事を書いていた彼らは、手紙で過去と現在がつながるという不思議な経験をすることに…。

「全てがあなた次第です。これは素晴らしいことです」  

 韓国版の演劇『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の制作会社はダル・カンパニー。同じくデミョン文化工場で上演されたミュージカル『容疑者Xの献身』に続いて東野圭吾原作の作品が続いています。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は日本でも何回か舞台化されていて、映画にもなっていますが、今回の韓国公演は劇団キャラメルボックスの再演版公演の輸入公演。舞台セット、脚本もキャラメルボックス版に準拠しているようです。

 小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は設定を共有する連作短編形式で書かれています。全部で5章ある小説の各章のタイトルは以下の通り。

  1. 回答は牛乳箱に
  2. 夜更けにハーモニカを
  3. シビックで朝まで
  4. 黙祷はビートルズ
  5. 空の上から祈り

 予習目的で購入して読んだ原作の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』ですが、物語全体を包むどこかノスタルジックで温かい空気と泣けるプロット、少しずつお互いに関係している登場人物たちの繋がりがとても素敵で、何回も涙を拭いながら読みました。ほっこりと温かい気持ちになれる読後感で、そういう泣けるお話が好きな人にはかなりオススメです。舞台版は原作小説のすべてのエピソードが詰め込まれているわけではないのですが、印象に残るエピソードをうまくピックアップし、場合によってはアレンジして舞台化していて、原作が好きな人にも満足するような脚本になっているんじゃないかなと感じました。昭和の空気を感じるレトロなナミヤ雑貨店のセットも、人間味溢れる登場人物たちのキャラクター造形も原作の雰囲気をうまく再現されていて。時々、涙を拭いながら観て、劇場を後にするときにはほっこりとした気分になれるとこも一緒でした。

(以下、ネタバレが多く含まれるのでご注意ください)

 原作でもそうだったんですが、私が一番好きなのは音楽の道を諦めて父の鮮魚店を継ぐべきかを相談する「魚屋ミュージシャン」の克郎のお話。克郎が慰問で児童養護施設を訪れ、クリスマスコンサートで施設の子供達に向けて歌う場面は少しだけ客席参加型。客席のみんなは施設の子供達になります(笑)心を閉ざした少女セリが心惹かれた克郎作詞作曲のオリジナル曲。一回聞いただけで曲を覚えてしまう音楽の才能の片鱗を克郎に見せる彼女。コンサートの日に施設を襲った火事で、セリの弟を救って自身は命を落とすことになる「魚屋ミュージシャン」の克郎。その辞世の言葉は父親と交わした約束を果たせたなかったと謝る言葉。時は流れて、人気アーティストとなったセリが彼女のライブの最後に歌うのは克郎がクリスマスの日に披露した克郎の歌。ライブに観客としてセリを憧れの眼差しで見つめる三人組。それが実現したのは、三人組が「魚屋ミュージシャン」に「音楽を続けてください。必ず、あなたの音楽で救われる人がいます。」と相談に回答したから…。優しい気持ちの連環が巡り巡っていく様子はやっぱりグッときます。

 ちなみにこのセリのライブの場面、コソ泥三人組は下手側前方の通路の階段に腰掛けてライブに参加します。何も知らずに下手側サイドブロック通路席で観劇していて、隣にウジンさん扮する敦也が座った時はちょっと動揺しました(笑)。敦也は三人組のリーダー格で硬派なキャラなはずなのに、前に座っている翔太の肩に抱きついて震えながら「うわぁぁぁ」みたいな推しに興奮しているようなかわいい声を出していて、ほんとウジンさんはこういうとこ卑怯だなと思いました。(←)

 敦也、翔太、幸平のコソ泥三人組は原作では同級生という設定。三人の中ではウジンさんが一人だけ明らかに年上な雰囲気を出しているのはご愛嬌という感じですが(←)、三人がわちゃわちゃしている様子はすごくかわいくてほっこり。翔太と幸平の二人が敦也のことを「アチュヤ、アチュヤ」って呼ぶのもかわいい...。友達の推しで今回初めて観るのを楽しみにしていたカン・ヨンソクさんが演じる幸平は、天然でちょっとアホの子の設定(笑)敦也と翔太がナミヤ雑貨店の不思議の仕組み気づいて二人で凄く盛り上がっている横で、困惑した表情で「?」を量産している姿、かわいすぎました。顔めっちゃ小さいしスタイルいい!びっくりして冷たくて固そうな土間に尻餅をつく場面が結構多いので、お尻に青アザができていないかちょっと心配...。びっくりと言えば、誰もいないはずなのに次々と雑貨店のシャッターに投函される手紙を気味悪がり、恐れをなしたウジン敦也が被る牛のマスク...。まさかアレを被って空き巣(結果的に強盗)に入ったんじゃないですよね?(←)ウジンさんが演じる敦也は原作を読んで描いていたイメージより熱くて優しく、笑いでも美味しいところを持っていき(笑)私が大好きな温かくて人間味溢れるウジンさんのキャラクターが存分に堪能できて癒されました。『ネクスト・トゥ・ノーマル』のナタリー役がすごく良くて好きだったチョン・ソンミンさんをすごく久しぶりに観れたのもなんだかとてもうれしかった。舞台版のもうひとつの大きな軸になっている経済的に自立したい相談者「迷える子犬」の晴美のエピソードも原作でも劇中でもかなり好きな部分。晴美役としての演技もとても印象に残りました。セリとの演じ分けが凄くて、別人かと思った!ここで名前を挙げれなかったキャストのみなさんも全員すごく良かったです。

 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は来月にもう1回観劇予定。またあの温かい余韻を感じながら劇場を後にするのがとても楽しみです。