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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】ミュージカル『マチルダ』(마틸다, Matilda) @ LG Art Center, Seoul《2019.1.2ソワレ》

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 2018-2019年の年末年始の締めの観劇作品はロアルド・ダール (Roald Dahl) の児童向け小説を元にしたイギリス発のミュージカル『マチルダ』(마틸다, Matilda) を観劇してきました。『マチルダ』は2011年にロンドンのキャンブリッジ劇場 (Cambridge Theatre) でオープンしてから今現在も10年近くロングランを続けているウェストエンドミュージカルの人気作品。ソウルでの公演は初めて英語以外での言語で『マチルダ』が公演されるということでも話題になったりもしました。私が観劇した回のキャストのみなさまは以下の通り。

 チルダ:ソル・ガウンさん
 ミス・トランチブル:チェ・ジェリムさん
 ミス・ハニー:パン・ジニさん
 ミスター・ワームウッド:ヒョン・スンチョルさん
 ミセス・ワームウッド:カン・ウンゴンさん
 ミセス・フェルプス:キム・ギジョンさん

 マチルダ以外の子役ちゃんたちの写真は撮影者の腕の問題で名前が読み取りづらいかと思いますが、韓国のミュージカル『ビリー・エリオット』でビリー役を務めたエリック・テイラーくんとソン・ジファンくんがそれぞれトミーとナイジェル役で出演していた回でもありました。

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 ちなみに私がマチルダを初めて観たのは2013年のロンドン。ウェストエンドからブロードウェイにトランスファーしたプロダクションも好評を博し、『マチルダ』がウェストエンドミュージカルの定番入りする日も近いことを予感できるようなタイミングでの観劇でした。『マチルダ』に関しては、なんとウィキペディアに日本語のエントリーもできていましたので、作品の詳細を知りたい方はこちらをどうぞ。

 原作同様に可愛らしい雰囲気ながらもウィットと少しばかりの毒を含んだ『マチルダ』はお気に入りのウェストエンド作品の一つ。先述の通り原作は児童文学に分類される作品なのですが、メインテーマ曲の「When I Grow Up」などは大人になってからはまた違った響きをもって胸に刺さってくると思われ。子供の頃にこの作品を観たキッズのみなさまには是非大人になってからまたこの作品を観て欲しいと思わせる作品です。また、ティム・ミンチン (Tim Minchin) 作詞作曲の曲がすごくいいんですよね。大好きです。

 ソウル公演のお目当はトランチブル校長先生役のチェ・ジェリムさん!『キンキー・ブーツ』のローラ役に引き続き女装をする役ですが、トランチブル先生はハンマー投げの元オリンピック代表選手という経歴を持つパワー自慢でマチルダが通う学校を恐怖で支配している鬼の女校長先生役。「女装」と書きましたが、トランチブル先生は生物学上の性別は女性なのです。ちなみにジェリムさんのトランチブル先生としての扮装姿はこちら。

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 まさにマチルダの前に立ちはだかる壁。そんないかついトランチブル校長先生なのですが、妙に可愛らしいところもあり。校長先生自らが教鞭をとる(?)体育の授業の場面では体操着のフィット感を気にして微調整してみたり、歩くときは何気に内股気味だったり。子役ちゃんたちとのオフショットの素のジェリムさんは子供たちが好きでしょうがないと顔に書いているようないい笑顔で写っているのですが、いじわるで子供嫌いで何よりも自分が大好きなトランチブル先生を生き生きと演じている姿が見れてよかったです。『マチルダ』はジェリムさんの爆発力満点の美声を堪能するのには不向きな作品ですが、こういう作品も心から楽しんで演じている雰囲気のジェリムさんも素敵。


チルダ出演時のジェリムさんのインタビュー動画
『キンキー・ブーツ』出演時の動画もちょこっと出てきます。
次はロマンチックな役で出演したいとのこと(笑)
 

 『マチルダ』のソウル公演はほとんどロンドン公演と演出を変えていないレプリカ公演だったのですが、それでも韓国に持って来るにあたって少し変わっていた部分も。訳詞家さん泣かせと思われる「School Song」がハングルの響きに合うような形に歌詞がうまく変えられていたのが特に目立つポイントだと思いますが、細かいところでいうと、二幕最初のマチルダぱぱのミスター・ワームウッドが歌う「Telly」は日本人にも馴染み深い語感の「Televi」になっていたり。ちなみにこの二幕冒頭のナンバーの前は客席参加型になっていますが、「本を読んだことがある人〜」というミスター・ワームウッドの呼びかけに対して手を挙げて名前を聞かれて怒られたのが私の隣に座っていたお姉さんだったので無駄にドキドキしました(笑)

 マチルダ役のソル・ガウンちゃんを初めとする子役ちゃんたちはみんな芸達者でかわいい。『マチルダ』で私が一番好きな曲は「When I Grow Up」ですが、次に好きなのはマチルダが登場しない子役ちゃんたちのナンバーでブルースONステージな「Revolting Children」だったり。ちなみにブルースはトランチブル先生秘蔵のチョコケーキを食べてしまったことにより校長先生の「ありがたい申し出」と言う名の恐怖の折檻を受けることになったのにも関わらず、その試練を乗り越えたちょっとぽっちゃりした勇者です。私が観た回のブルースのキム・ギュドンくんではないですが、せっかくなので韓国版の「Revolting Children」の動画も貼っておきます。この動画のブルースは韓国版『ビリー・エリオット』でマイケル役も演じていたクァク・イアンくん。イアンくんのマイケルとブルースも観たかったなぁ。


ミュージカル『マチルダ』より「Revolting Children」(韓国語バージョン)
 

 結局2018-2019年の年末年始はこの『マチルダ』を含めて11演目を観たのですが、さすがに数が多すぎて少し観劇疲れしていた時に観た『マチルダ』。幅広い年齢層に受け入れられるユーモアたっぷりの優しい物語。音楽、歌詞、舞台装置とその転換のどれをとっても凄く考えられ抜かれた秀作だなぁと改めて感じるとともに、やっとお互いと幸せを見つけることができたマチルダとミス・ハニーの物語にほろりと癒されたのでした。