2015年のゴールデンウィークの観劇旅行での観劇1作品目はイメルダ・スタウントン (Imelda Staunton) さん主演のミュージカル『ジプシー』(Gypsy) でした。読むレビュー、観劇した方の感想ツイートがどれも大絶賛だったのでかなり楽しみにしていたのですが、期待以上の素晴らしい舞台でした!観劇当日の感想ツイートと、その後にネタバレありの感想が続きます。
観劇後の感想ツイート
#Gypsy Imeldaさんすごい…。もうオーラと迫力が。こんなに女優さんの演技で心が震えたのは初めてかもしれない。もう圧巻。
— satoko (@_simpleandclean) 2015年5月1日
#Gypsy あらすじと有名どころの曲は知ってたもの、Imeldaさんが演じるということを知るまではそこまで実は興味がなかったGypsy。ステージママのお話で、こんなに感動して泣けるとは全く予想外でした…
— satoko (@_simpleandclean) 2015年5月1日
#Gypsy Louiseの母親への愛の深さは偉大だなぁ。自分の果たし得なかった夢を自分の娘に押し付けるママ・ローズは滑稽で哀れで、それでもただでは転ばない鋼の精神の持ち主で。登場人物としても強烈なキャラクターだから、Imeldaさんのような大女優が演じて作品が生きるんだろうな
— satoko (@_simpleandclean) 2015年5月1日
キャスト
ママ・ローズ (Momma Rose):イメルダ・スタウントン (Imelda Staunton)
ルイーズ (Louise):ララ・パルヴァー (Lara Pulver)
ハービー (Herbie):ピーター・デイヴィッドソン (Peter Davidson)
ジューン (June):ジェマ・サットン (Gemma Sutton)
タルサ (Tulsa):ダン・バートン (Dan Burton)
ネタバレあり感想
『ジプシー』のストーリーは、全てあの感動的なラストのためにあるんだと思います。自分の果たせなかった夢を娘に託すママ・ローズ。生活が苦しくなっていくにつれて、どんどんママは手段を選ばなくなっていく。子供たちのためと言いながら、行き過ぎた名声への執着は彼女自身の夢を実現するためで。それを感じる周囲の人たちは、どんどんローズの元を去っていく。ローズを愛しているといい、長年プロポーズを続けていたハービーでさえ。
最後までママの元を離れなかったのは、期待されていなかった方の娘のルイーズだけ。やっと得ることができた母からの期待を裏切りたくない一心で、ルイーズはためらいながらもママ自身が否定した上で引き受けたバーレスクのパフォーマンスでさえもやってみせようとする。その中で才能を開花させ、彼女自身の自我も名声とともに育てていくルイーズ。ママの考えるパフォーマンスが衣装や小道具、歌を変えても基本的に全く同じに見えるのに、ルイーズが歌う初めてのストリップ・ティーズのパフォーマンスの「Let Me Entertain You」は同じ曲なのに全く違うものに見えるのがまたとても印象的で。その姿は本当に初々しくも美しく輝いていて、やがて艶やかなものになっていって。
やっと手に入れた名声なのに、ママはそれがバーレスクのパフォーマーとしての人気であることが気に入らない。ルイーズが自分を蔑ろにしていると感じるのも気に入らない。そのことについて、二人はある日ついに大喧嘩をする。喧嘩の一番最後にルイーズが言った
I thought you did it all for me, Momma
すべて私のためにしてくれてたんだと思ってたわ、ママ
という言葉を受けて、一人になったママは自分が人生を捧げてきたことはいったいなんだったのかを自分自身に問い、これからは他人ではなく自分自身が輝くために生きてやると心情を吐露する。ここからラストまでの「Rose’s Turn」のイメルダさんの演技が圧巻で。あまりの凄さに震えて涙が滝のように流れてきました。自分がスターにどれだけなりたかったかという渇望を、全力で一人きりでのパフォーマンスにぶつけるローズ。
そんな母の姿を見ていたルイーズは、きっと母は素晴らしいパフォーマーになれただろうと優しく慰める。ついに母娘が和解したように見えて安堵した側から、ママがマダム・ローズとジプシー・ローズ・リーと二人のショーにしてはどうかと提案する。本当にこの人は懲りないなと思ってると、ルイーズがママに背を向けて静かに歩き始めて…「ああどうしよう、ついにあの優しいルイーズにも愛想を尽かされてしまった!」とハラハラしていたら、ママは子供のようにひょこひょこ歩いて娘の背中を追って行って。後から付いてくるママに対して、優しく母の腰を抱いてエスコートするように隣を歩くルイーズの美しい背中に涙腺が決壊しました。まるで聖母のようなルイーズの母への愛に号泣。これを書きながらも思い出し泣きしてます…。
[2018.2.10 追記]
観劇から3年経った今でも思い出し泣きできる...(T_T) イメルダさんはもちろん、ルイーズ役のララ・パルヴァーさんも本当に素晴らしくって。考えてみると、この作品も表現者として生きたい人の業とそれを超える愛の話ですよね。相変わらずこういう話好きだな、私。
[2020.12.12 追記]
「The Show Must Go On」の無料オンライン配信で『ジプシー』が視聴可能になったことをきっかけに表記などを少し見直して修正しました。やはりルイーズの海より深い母への愛と強烈なステージ・ママっぷりを発揮するイメルダさんの圧倒的な存在感に涙。ママ・ローズには全然共感できないのに存在感と迫力だけであれだけ泣かせてくれるイメルダさんやっぱり凄い。