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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』 (키다리 아저씨, Daddy Long Legs) @ DCF Daemyeong Culture Factory, Seoul《2017.6.10マチネ》

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  2ヶ月振りの渡韓の1本目で観たのは、オフ・ブロードウェイ公演のライブビューイングを観て以来大好きな作品になった二人ミュージカルの『ダディ・ロング・レッグズ』(키다리 아저씨, Daddy Long Legs) でした。私が観た回のキャストは

 ジルーシャ (JERUSHA) : イム・ヘヨン さん
 ジャーヴィス (JERVIS) : ソン・ウォングン さん

でした。お二人とも、今回の観劇で初めましての俳優さんです。私がダディを観るのは去年の韓国初演以来。韓国初演の時に観たのはジルーシャがユリアさん、ジャーヴィスシン・ソンロクさんだったので、まるっと違うキャストの組み合わせで観るダディということでも楽しみにしていた観劇でした。

  去年に引き続き、2回目になる今年の韓国のダディの公演はオフ・ブロードウェイ版演出。オフ・ブロードウェイ版の演出の流れについては、去年のゴールデンウィークにNY遠征した時のほぼ全曲を網羅したレポを書いていますので、興味がある方は以下のリンクからどうぞ。

 結論。二人の素敵なジルーシャとジャーヴィスに魅せられて、作品への愛を再確認し、泣いて、笑ってキュンキュンしぱなっしの幸せな時間でした。

 ジャーヴィス役のウォングンさんは「足長おじさん」の名前に恥じないスラッとした長身に穏やかな表情の甘いマスクと落ち着いたトーンの甘い歌声が素敵な俳優さんで、どこか育ちの良さを感じる佇まい。そしてその第一印象を裏切る感じのオタオタわたわたジタバタする焦りっぷりのギャップが魅力的な坊ちゃんでした。まるで少女漫画の世界から飛び出してきたようなジャーヴィス坊ちゃん。

 ジルーシャ役のヘヨンさんは、意志の強そうなキリッとした目元と表情豊かな演技がとても印象的な女優さんで、明るくて快活、ユーモアたっぷり、好奇心旺盛で人に感謝する心を忘れない優しくて強い女の子という私の中のジュディのイメージど真ん中のジルーシャでした。とにかくそのキラキラと輝く目とくるくると変わる表情が本当に魅力的!気がつくとずっと目で追ってしまうかわいいジュディでした。かわいいい…癒される…。

(以下、ネタバレありなのでご注意下さい。)

 

 ヘヨンさんのジルーシャの表情の演技の魅力を書きあげていったらキリがないのですが、特にお気に入りのシーンを挙げてみると、「院長先生」のモノマネをするときの能面のような表情と平たい声、その院長先生から「夏休みはジョン・グリア孤児院に戻って手伝うように」という手紙を受け取って、おじさんに助けを求める手紙を読んだ後の「死んじゃう」と自分で自分の首を絞めるフリをしてグエッと潰されたカエルのような声を出すところとか(笑)おじさんの采配で無事孤児院行きを免れて、おじさんに「救世主!」と感謝する時のいたずらっ子のようないい笑顔とか。二幕でイケメンのサリーのお兄さん、ジミーのことを書いた手紙のシーンのウットリした表情とか舞い上がってキュルンとした感じの表情とか。「ジャーヴィス」の誘いも「おじさん」の指示も撥ね退けて自分の計画通りの夏休みを満喫できていることに意気揚々としている表情とか。すごくユーモアたっぷりで思わず笑ってしまうかわいい表情がすごく印象的でした。

 ウォングンさんジャーヴィスのお気に入りのシーンは、やっぱり舞台裏でジュディに翻弄されているシーンが多いです(笑)クリスマスにジルーシャが送った「愛を送ります」の文章に動揺しすぎな 「What Does She Mean by Love?」(사랑이라니) の坊ちゃんとか。幼き日のジャーヴィスがロックウィロウで過ごしたことを知ったジュディが「もしかして、おじさんはジャーヴィスさんとお知り合い?…いいえそのお父様と?…それともお爺様?」と書いた手紙に対する反応とか。「サリーのイケメンのお兄さんジミー」登場に過敏に反応する姿とか。あの手この手を使ってジルーシャと夏休みを過ごすことを画策するものの、見事に全部空回りした挙句、ジュディに手紙でトドメを刺され、ヤケッぱちでタイプライターで書いた手紙を丸めて投げ捨ててフーッと奇声をあげるとことか(笑)

 と、コミカルな場面ばっかり挙げてしまいましたが、泣けて、キュンキュンできる場面も満載なわけで。「I’m A Beast」(난 바보야) でジュディがグチャグチャな気持ちをおじさんに投げつける手紙を送りつけてしまった後に、お見舞いの花束を受け取って、急に自分のしたことがすごく恥ずかしくなって、自分の頭を叩きながらする眉が垂れ下がった情けない泣き笑いの表情とか。「Secret of Happiness」(행복의 비밀) でジュディが窓から逃がしてあげたあしなが蜘蛛を見守る時のすごく優しい表情とそれをなぞる坊ちゃんの仕草とか。ヘヨンさんとウォングンさんの視線を追っていくと、そこにはまるで風に優雅に舞いながら空を漂うあしなが蜘蛛が見えるようで。気がめげてしまうような不運な事件の連続の果てに、ジュディが見つける小さな幸せがおじさんと同じ名前を冠したあしなが蜘蛛のダディ・ロング・レッグズというのも素敵だし、それをきっかけに小さな幸せを噛み締めるジュディがそんな日々を与えてくれた恩人としておじさんに思いを馳せる、というのもいいなぁと。そしてジャーヴィスはそんなジュディの感謝と愛を受けて、また幸せを感じるという。その温かくて優しい気持ちの連鎖と、美しいメロディに心がじんわりして泣けるのです。

 ジュディに惹かれば惹かれるほど、引っ込みがつかなくなって自分の正体を明かすべきか悩むジャーヴィス坊ちゃんの姿はなんとももどかしくて。二幕の後半は特にお互いがお互いを思い合う故にすれちがっていって胸が痛いです。Graduation Day」(졸업식 날) はオフブロで観たときも泣いてしまいましたが、今回も漏れなく…。招待客の中に必死におじさんの姿を探して、見つけられなくて落胆するジュディの姿も、「僕はここにいる」と声に出せない訴えを胸にジュディの晴れ姿を見守るジャーヴィスも切なすぎて。・゜・(ノД`)・゜・。

 そしてジュディが卒業を果たし、自分の役目も終わりだと気落ちし、与えているつもりが自分はジルーシャから受け取るばかりだったとCharity」(자선사업) でうなだれる坊ちゃんの姿も切なくて。そんな時に彼女が作家としての一歩を踏み出したという報せに奮いたち、ジルーシャにプロポーズの言葉を告げるウォングン坊ちゃんの表情はすばらしく甘く、そしてその後の俯きがちに絞ったような声で呟く「ミアネヨ」の落差に胸を締め付けられ。すっかり意気消沈したジャーヴィスの元に届いたジュディの手紙の「会いたくて、会いたくて」の件りのヘヨンジュディの泣きそうな表情も切なくて…。縋るようなジュディのおじさんに助けを求める手紙を受けて、ついに自分の正体を明かす勇気を出したジャーヴィスが「足長おじさん」として初めて出した手紙を読んで、「幸せの秘密は水曜日の午後にある」と歌う泣き笑いのヘヨンジュディの瞳はうれしさに輝いていて。お互い緊張した面持ちで果たす対面と、その後の情けないウォングン坊ちゃんの表情と、プンスカ怒るヘヨンジュディの喧嘩も見ていて微笑ましく。All This Time」でやっと二人がおさまるべきところにおさまって、初めて交わす両想いのキスとハグに最高にしあわせな気持ちでキュンキュンするのです。

 と、オフブロで観た時にあれだけ長いレポを書いたのにまた無駄に長くなってしまいました(汗)でも、レポを書いていて再認識しましたが、それだけダディは私にとって大好きな作品なんですよね。今回お初だった二人の俳優さんの歌と演技も素敵で、特にヘヨンさんのジュディはすごく好みだったので、機会があればまた是非観たいです!

 ヘヨンさん(とソンロクさん)の 「Secret of Happiness」、ウォングンさんとヘヨンさんの「My Manhattan」プレスコール動画を見つけたので貼っておきます。

2017年のプレスコールより「Secret of Happiness」(행복의 비밀)
イム・ヘヨン、シン・ソンロク

2017年のプレスコールより「My Manhattan」(나의 맨하튼)
イム・ヘヨン、ソン・ウォングン

 ヘヨンさんがまた観たいとだけ書いてましたが、この動画観てたらまたウォングンさんとの組み合わせで観たくなってきた…。

Postscript

 つい最近、なんとBroadway HD で2015年に実施されたオフ・ブロードウェイ公演のライブストリーミング映像が見れるようになりました!なんと私生活ではご夫婦のMeganさんジルーシャとAdamさんジャーヴィス。こちら本当に素敵なので、興味ある方はぜひぜひ!本当に本当に、泣けて笑えてキュンキュンできて音楽もすごく素敵な作品なので!