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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2017.7.30ソワレ》

2017/7/30 ソワレ『ビリー・エリオット』のキャスト

 発表されたタイミングからずっと観れる時を待ちわびていたミュージカルビリー・エリオット』(Billy Elliot) の東京公演を観てきました!記念すべき私の日本版ビリー初観劇のキャストは

 ビリー : 加藤航世さん
 お父さん : 吉田鋼太郎さん
 ウィルキンソン先生 : 島田歌穂さん
 おばあちゃん : 根岸季衣さん
 トニー : 中河内雅貴さん
 マイケル : 古賀瑠さん
 デビー : 佐々木琴花さん
 オールダー・ビリー : 栗山廉さん
 トール・ボーイ : 山城力さん
 スモール・ボーイ : 岡野凛音さん
 バレエ・ガールズ :
  小野梓さん、久保井まい子さん、並木月渚さん、堀越有里愛さん

でした。なんなら大人キャストも全員書き出したいくらいの素晴らしいカンパニー!舞台を見ていてもパンフレットを読んでいてもあらゆることの端々に日本版『ビリー・エリオット』への想いというか、愛がヒシヒシと感じられてなんだかそれだけで胸がいっぱいになります。週末に観て数日経ちますが、まだ上手くこの思いを言語化できていません。この気持ちはなんだかまるで「Electricity」の歌い出しみたい。

上手く言えません
言葉にできない
抑えきれない気持ち
自分をなくすような 忘れるような
ほんとの僕になるような

I can’t really explain it
I haven’t got the words
It’s a feeling you can’t control
I suppose like it’s forgetting, losing who you are
At the same time something makes you whole

— 『ビリー・エリオット』公演パンフレットより(訳詞:高橋亜子さん、原詞:Lee Hall さん)

 いきなり話は飛びますが、私は日本版ビリーの訳詞がかなり好きです。オリジナルの歌詞のニュアンスがほとんど損なわれることなくメロディにのせられていて。上で引用したオリジナルの歌詞を歌に乗せることを意識せずに自分が訳するとしたら、こんな感じ。

上手く説明ができないんだ
いい言葉を持っていない
コントロールできない気持ちなんだ
忘れることに似ているかもしれない、自分が誰かを手放すような
同時に何かが自分を完全にしてくれるんだ

時間をかけてしっかり言葉を吟味してできた訳詞なんだと思います。訳詞に限らず、ビリーたちをはじめとする子役たちの育成についてもそうですし、とてつもなく色んな方々の時間と労力と情熱と愛情をかけて日本版ビリーは幕を上げたのだと思います。そしてそれだけ色んな人のパワーをかけるだけの魅力がミュージカル『ビリー・エリオット』にはあるのだと思います。

 私が初めてビリーを観たのは2013年、ロンドンのヴィクトリア・パレス (Victoria Palace) 劇場。その時すでに10年近いロングランを果たしていたロンドンのビリーでしたが、私が観劇した日はちょうどオリヴィエ賞の結果発表の翌日で、一般からの投票で決まるその年の人気作品に贈られる BBC Audience Award をビリーが受賞した次の日でした。その日の観劇後の興奮冷め止まない気持ちは今でもよく覚えています。

 ビリーがこんなにもエキサイティングな作品だって知らなかった!
 なんでもっと早く観なかったんだろう
 絶対また観に来たい!

 その後『Billy Elliot the Musical Live』を観た直後の感動と熱に浮かされて、もう1回2014年の年末にもう一度ロンドンでまた観たビリー。もうロンドンのヴィクトリア・パレス劇場に行ってもビリーを観れないと思うと、すごく寂しい気分になります。

 東京で初めて観たビリーは間違いなく私がロンドンで、映画館で感動した『ビリー・エリオット』そのもので、同時に「これは日本のビリーなんだ」と強く感じました。なんだかそれだけで胸がいっぱいになってしまって、案の定観劇中私は始終涙目で、ビリーとその家族、炭鉱の街のみんなの物語に泣き笑い、泣いて、泣いて。泣きすぎて頭が痛くなってしまい、自分の中で渦巻いている言語化できない想いの奔流をどう処理していいのかがわからなくて、帰りの電車も家に帰った後もいつも以上にぼーっと過ごしてしまいました。少し落ち着いたものの、今もまだそれが続いている感じがします。

 公演初期にはありがちなハプニングやアクシデントも多くてハラハラする部分もあったし、「これ以上は望めない」と思うような完成した舞台ではなかったのだけど、それでも「観てよかった!」と心から思える満足感。そして、これからどう舞台が進化するのかを見届けたい、という気持ち。

 まとまらない感想はいっぱいあるんですよ。(以下ネタバレばかりです)

 航世くんのビリーは踊りがすごく綺麗で真面目で一途な感じがとてもかわいい。今後もっと「自分をなくすような」感情に身を任せて自分を開放した航世くんのビリーが見てみたい!瑠くんのマイケルは自分の本能に忠実に生きている感じが凄く好き。チュチュを着て喜んだり着せ替え人形を自慢げに見せたりしてるとこがめちゃくちゃかわいい。二人の「Expressing Yourself」はかわいすぎて悶える。吉田鋼太郎さんのお父さんは不器用で愛おしい。厳しくも愛情深い優しいお父ちゃん。ビリー以上にあたふたしているオーディションの父ちゃんかわいすぎる。九州弁かわいい。島田歌穂さんのウィルキンソン先生はイメージ通りすぎる。歌もダンスも演技も素晴らしい!中河内さんのトニーは見た目も性格もイケメン!演技もすごくよかった!根岸さんのおばあちゃんチャーミングすぎる。炭鉱のおじちゃんたちがちゃんと炭鉱のおじちゃんたちで、いかついながらもかわいくてうれしい!一見どこにでもいそうな普通の人たちが実はめっちゃ歌って踊れるのがビリーのアンサンブルの魅力だと思っているから、その通りで本当にうれしい!ビリーの父ちゃん、母ちゃんっていう呼び方かわいいな。ほとんどかわいいしか言ってないな私!でも、物語は非情なまでに厳しいんだよね。母ちゃんの手紙とか、父ちゃんのスト破り未遂とトニーのぶつかりとか、炭鉱へ戻っていくおじちゃんたちとか泣くしかないシーン多すぎる。でも「Swan Lake Pas de Deux」は感情移入じゃなくて、純粋な感動で泣いちゃうよね。そして「Angry Dance」やっぱりかっこよすぎる!生であのシールドがぶつかる音を聞くとブワーッと鳥肌が立つよね。「Solidarity」はミュージカル史上に残る名振り付けのシーケンスだよね!「Electricity」の最後の歌い上げとフィニッシュは「がんばれ!」って思って見てしまうよね。そしてその後のうれしそうな父ちゃんかわいすぎるよね、とか、とか、とか…。(←まとまらないからと言って開き直りすぎ)

 上で一気にまくしたてたような感想が次々と脳裏をよぎっては去っていくのです。そして度々脳内をビリーの音楽と踊りがジャック。

団結だ、団結だ!
団結、永遠に!
Solidarity, Solidarity! 
Solidarity Forever!

  まだまだ聞き込んでいる回数が全然違うのでオリジナルの英語歌詞が脳内優勢ですが、日本語と英語が入り混じって脳内は完全なるカオスです。完全に熱に浮かされているような状態で、まだ見ぬビリーへの期待も、今後の成長への期待も膨らむばかりなので後何回かは絶対観に行きたいと思っています。すでに勢いで大阪公演のチケットまでポチッちゃいました。(←)

 私の中では、ビリーは「遠征しないと観れない作品」でした。ビリーにしろ、マイケルにしろ、あまりにも子役に求められる資質が大きくて、しかもそれだけの才能を持ったビリーが5人くらいいて初めて実現可能な作品。日本人の子役からビリーやマイケルを探し出すのも、あれだけの人数の子役が必要になる演目が海外ツアーになって来日公演になるのも、どちらも同じくらい非現実的なことのように思っていました。日本で、日本人キャストでビリーを観れる。それを可能にしたことに関わったすべての方にただただ感謝の気持ちしかありません。

 まだまだ、ロンドン版からツアー版/日本版になったときに変わったと思われる演出の部分とかについてとか、まとめてみたいことは色々あるのですが…。まだ日本のビリーは始まったばかり。これからどう進化していくのかを見守るのが楽しみでなりません。