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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】ミュージカル『ルドウィク : ベートーヴェン・ザ・ピアノ』(루드윅:베토벤 더 피아노, Ludwig: Beethoven the Piano) @ Dream Art Center, Seoul《2019.6.1ソワレ, 2019.6.29ソワレ》

 2018年の冬から年始にかけての初演が大好評に終わり、2019年の4月から早速の再演が行われた韓国創作ミュージカル『ルドウィク : ベートーヴェン・ザ・ピアノ』(루드윅:베토벤 더 피아노, Ludwig: Beethoven the Piano, 以下、『ルドウィク』)。ベートーヴェンの幼少期、青年期、壮年期を3人の俳優さんが演じ、さらにその3人の俳優さんは他の役も演じながら語られるベートーヴェンの人生の物語。『ルドウィク』は韓国ミュージカルでは一つの人気ジャンルとなっている史実とフィクションを織り交ぜてドラマチックに芸術家の人生を描くミュージカル作品です。再演の終盤にあたる6月頭に初めて観劇して感動し、どうしてももう1回観たくなって急遽千秋楽間際にもう一度滑り込みで観劇したこの作品。この2回の公演のキャストは下記のみなさまでした。

  1. [2019.6.1 ソワレ]
     ルドウィク:テイさん
     青年:チョ・ファンジさん
     マリー:キム・リョウォンさん
     バルト:チャ・ソンジェさん
     ピアニスト:カン・スヨンさん
  2. [2019.6.29 ソワレ]
     ルドウィク:イ・ジュグァンさん
     青年:チョ・ファンジさん
     マリー:キム・ジユさん
     バルト:チャ・ソンジェさん
     ピアニスト:カン・スヨンさん

2019.6.1 ソワレのキャストボード2019.6.29 ソワレのキャストボード
2019.6.1 ソワレ, 2019.6.29 ソワレのキャストボード

 役名はキャストボードに準拠して記載していますが、未記載の大きな役としてはルドウィクの青年期役の俳優さんがルドウィクの甥のカールを、バルト役の俳優さんがルドウィクとカールの幼少期を演じます。作品の脚本、作曲はこのブログでも観劇レポを書いた『インタビュー』『スモーク』でお馴染みのチュ・ジョンファ、ホ・スヒョンご夫妻のタッグ。ベートーヴェンの著作はもちろん、それ以外にもクラシックの楽曲をふんだんに劇中で使っている本作。ベートーヴェンが苦悩、絶望、挫折とどのように向き合って受け入れてきたか。『ルドウィク』はベートーヴェンの人生のターニングポイントをマリーという架空の人物との交流を軸に描いたフィクションです。

(以下、ネタバレが多数含まれるのでご注意ください。)

ある女性に宛てた手紙

 物語はある青年が教会を訪れる場面からスタート。教会の片隅に置かれたアップライトピアノを見つけた青年は、そのピアノの前に座り「アヴェ・マリア1を弾き始めます。ピアノの旋律とともにキャンドルの灯りを携えて青年に近づいてくる一人のシスター。亡くなったベートーヴェンから預かった手紙の宛先人を探していた青年。ドミニカと名乗った修道女はまさに彼の探し人その人だったのでした。手紙を読む間亡くなった音楽家先生の曲を弾いてくれないかと青年に頼み、手紙を読み始めるドミニカ。手紙は死を目前にしたベートーヴェンが自分の人生を振り返る内容で、やがて舞台はベートーヴェン、もといルドウィクの回想へと移っていきます。

 少年時代はモーツァルトのせいで悪夢のようだったと語るルドウィク。「そんなことではモーツァルトのような天才になれないぞ!」と厳しい父にピアノの練習を強要された幼い日々。父の指導は辛くてしょうがなかったのに、それでもピアノを弾くことは大好きだったルドウィク。

 この場面は壮年ルドウィク役の俳優さんとバルト役の俳優さんがルドウィクの父親役、幼年時代のルドウィクを両方が演じます。年相応の役をそれぞれが演じている時はもちろんのこと、役が入れ替わって壮年ルドウィクが幼いルドウィクを、少年ルドウィクが厳しい父を演じる部分がとても印象的。大きな声で怒鳴り散らす父を演じるソンジェくんの迫力。父の恫喝に怯えて、不安に揺れる目を見開き、身を縮こまさせるテイさんとジュグァンさんの頑是なさ。

 『ルドウィク』の前半部分は俳優さんが演じている役柄が一瞬のうちに何回も入れ替わりながらも誰が誰をどういう立場で演じているのか混乱することは一度もなく。後から思い出すとその構成の妙と俳優さんたち演技力の高さに舌を巻くのですが、観ている間はひたすらどんどんと物語に引き込まれて見入っていました。

「喪失」、「試練」、そして「運命」の受容

 私が『ルドウィク』の物語で一番心を揺さぶられたのは彼の青年期を演じる俳優さんを中心に展開される、ベートーヴェンが聴力を失っていく過程を描いたエピソード。私が観劇した回でベートーヴェンの青年時代を演じた俳優さんはチョ・ファンジさん。久しぶりにたった1回の観劇ですっかり心を攫われた俳優さんとの出会いでした。

 自分から「聴く」力が失われつつあることを認められず、必死にその考えを払拭しようとする焦燥感。音楽家である自分にとって大切な力が奪われていく恐怖とその是非を神に問う気持ちを音楽に乗せた「喪失」(상실)「試練」(시련) のナンバー。

 

2019年プレスコールより「喪失」(상실)
キム・ジュホ、チョ・ファンジ
 

2019年プレスコールより「試練」(시련)
キム・ジュホ、チョ・ファンジ
 

 この声。そしてさらに切迫して感じた苦悩の表情。特に私が初めて『ルドウィク』を観劇した時は最前列上手側の席からの観劇。手を伸ばしたら俳優さんに触れられそうな距離感で身を切られるような苦痛の感情が伝わってきて、止まることを知らずに涙が流れ続けました。上手側の席だと、ドミニカを訪ねてきた青年役でピアニストのスヨンさんの表情もよく見えて。自身もルドウィクと同じ痛みを感じているような表情で感情豊かにピアノを弾く姿も胸に迫ってきました。

 ルドウィクと修道女ドミニカの出会いも彼の青年時代。ドミニカは彼女の洗礼名。ルドウィクと彼女が出会った当時に彼女が名乗っていた名前はマリー。聴力が失われていくことに絶望してルドウィクが自ら命を絶とうとした嵐の晩。二人の、そしてルドウィクの人生に大きな影響を与えることとなるバルト少年とルドウィクの出会いはそんな日の出来事だったのでした。

 嵐の中マリーがルドウィクの元を訪ねてきたのは自分の教え子であるバルトを彼の弟子にしてもらうため。ルドウィクと同郷であるマリー。マリーは近所のパン屋に買い物に出掛ける度に聞こえてきたピアノの音色に勇気を貰ったことを熱心にルドウィクに説明します。ほとんどの女性が高等教育を受けることができなかった時代に自ら頼み込んで特別に建築を学ぶことを許されたマリー。突然の依頼には切実さがあるものの、夢と希望に溢れてキラキラと表情を輝かせるマリーとバルトに対して死を選ぶまで絶望していたルドウィク。最初は彼女らが「よく聞こえるように」と差し出した聴診器を投げ捨てたりと訪問者たちを邪険に扱うルドウィクですが、バルトがルドウィクの未発表曲を弾いて再現させてみせた後にその表情と態度を改めます。


2019年プレスコールより「世の中を超えて夢に向かって」(세상을 넘어 꿈을 향해)
キム・リョウォン、イ・ヨンギュ、チャ・ソンジェ
 

 涙を目にいっぱい溜めて、「先生、ピアノを弾くと自分の中の何かがむず痒くなるんです」と訴えるバルト。「いつか先生の音楽のような人生を変える家を作るのが夢です」、「先生の音楽をバルトに教えてください」と語るマリー。しかし、ルドウィクはバルトの才能を本物であると認めるからこそ、音を喪いつつある自分にはその教師を務めることはできないと二人の要請を拒むのでした。三人それぞれの胸の内にわだかまるやり切れなさ。

 バルト少年を演じるソンジェくんは振替なしで自身でピアノを弾くのですが、そのピアノの演奏もさることながら件の台詞を言うときの演技が素晴らしくて。きっとピアノの演奏だったり、ミュージカル俳優として歌って演技をすることに対して同じくらいの情熱を抱いているんだろうなぁと思わせる熱のこもり方で凄くグッときました。末恐ろしい才能です。

 幼い頃に母を亡くし、父も帰らぬ人となって身寄りがなくなったバルトはイギリスに住む親戚を頼るざるを得ず、母のように慕っていたマリーと離れて暮らさなくてはいけません。別れの船出の日、バルトはこっそりとルドウィクの部屋から持ち帰ってしまった楽譜を「代わりに先生に返して欲しい」とマリーに頼み、彼女はその願いを聞き入れます。

 約束通り楽譜を携えてルドウィクを再び訪ねるマリー。しかし彼女には以前のような溌剌さはなく、絶望に身を任せて酒浸りで暮らすルドウィク以上に暗い表情をしています。イギリスに渡るためにバルトが乗った船が沈没したことをルドウィクに伝えるマリー。ルドウィクはマリーに自分を責めているのかと問います。一度はそれを否定したものの、やがて泣き崩れて「先生がバルトを受け入れてくれたなら」と思わずにいれない気持ちがあることを認めるマリー。

 静かに、でも青い炎を燃やすように悲しみの感情を見せるリョウォンさんのマリーに対し、幼い子供のように泣きじゃくるジユさんのマリー。どちらの女優さんも演技も歌も素敵な女優さんですがお二人の役へのアプローチの仕方はかなり対照的で、そんな対比も印象に残りました。

 バルトの死の報せを受けて、ルドウィクは深い後悔とともに希望を抱くことに対する虚しさを口にしますが、マリーは自分は絶対に夢を諦めないと強くルドウィクに言い放ち、彼の元を去ります。マリーが去った後にさらに絶望の気持ちに沈んでいくルドウィク。ですが、深く沈んだ絶望の底に訪れた静けさの中で「静寂も音楽である」ことに気づき、さらに溢れ出てくる自分の音楽を見つけます。


2019年プレスコールより「運命」(운명)
ソ・ボムソク、イ・ヨンギュ
 

 言葉で言い表そうとすると陳腐になってしまうので難しいんですが、この絶望の深淵の中でルドウィクが自分の音楽と希望を見出すナンバーが本当に凄く感動的なんです。自分の運命と和解し、試練を乗り越えたルドウィク。壮年期のルドウィクと青年期のルドウィクがお互いを労うように抱き合って、朗らかに声を立てて笑い合う姿にそれまでとは違う涙が流れ出て止まらなくなって。それまでのルドウィクの苦悩があまりにも深いのでその感慨もひとしおで。オーケストラによって奏でられる力強い音楽とともにルドウィクの新たな歩みが始まっていくことが理屈ではなく感じられて。演出、演技、音楽の相乗効果でミュージカルならでは体感できるカタルシスだと思います。

次世代に引き継ぐ夢

 ルドウィクとその甥のカールを中心に物語が展開される『ルドウィク』の後半部分2。この作品のタイトルが "Ludwig" のドイツ語読みの「ルートヴィヒ」ではなく、「ルドウィク」なのも劇中でカールが自分の伯父をそう呼んだことに由来していたりします。幼少期のカールと出会い、バルトが再び自分の前に現れたと勘違いするルドウィク。その出会いに因果的なものを感じ、カールを立派な音楽家に育てようと決意するルドウィク。しかしカールは音楽やピアノに興味を持てず、次第に才能のない自分に伯父が掛ける情熱や期待を重荷に感じていきます。

 マリーとルドウィクの三度目、そして最後の邂逅はカールとルドウィクの隠れた確執が臨界点に達しようとしていたタイミングでした。久しぶりにルドウィクを訪ねたとき、男装で世界を縦断する旅人になっていたマリー。彼女は建築家になる夢を叶え、建築博覧会で入賞するまでの実力を身に付けていました。


2019年プレスコールより「私の服」(나의 옷)
キム・ジユ、キム・ジュホ
 

 ルドウィクに乞われて再会を記念する祝杯を受け取り、なぜ男の姿で世界を旅をするのかを語るマリー。男性の服は女性の服では閉じられていた門を開いてくれた。そんな中で先生の音楽はやっぱり自分に力をくれた。実はマリーは建築博覧会に兄の名前で応募していて、自分の名前では受付もされなかったのです。嘘をつきながら生きるのは苦しくないのかと邪気なくルドウィクに聞かれ、歯切れが悪くなり、話題を変えるマリー。

 カールを自分の音楽の後継者として育てているという話をルドウィクから聞き、バルトにしてやれなかったことをカールにしようとしていることを感じ取ったマリー。その想いに感謝をしつつもマリーはルドウィクがカールをバルトの代わりにしていることに一抹の不安を抱きます。不安は的中し、カールは才能がありながらも早逝したバルトの存在を知り、ルドウィクが勝手に自分のピアノ演奏会をセッティングしたことを機に不満を爆発させます。ついにマリーの目の前でルドウィクと口論を始めるカール。マリーがルドウィクにとって特別な存在だと考えたカールは、マリーに自分の代わりに伯父を説得してくれるように懇願します。最初は関わりを避けようとしたマリーですが、意を決してカールが本当にやりたいことが何かを考えたことがあるのかをルドウィクに問いかけます。それにカッとなってしまい、マリーに「嘘」を生きる是非を問うルドウィク。結果は物別れに終わりますが、マリーの忠告、夢に対する強い決意の言葉はルドウィクの心に大きな爪痕を残します。

 結局カールを自分の後継者にする夢を諦めきれず、カールを自殺未遂にまで追い込んでしまうルドウィク。軍人になりたいという自分の夢を伯父に聞き入れてもらえず、自死を選んだカールの姿とともに流れるベートーヴェンの晩年の大作、交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」。力強い「歓喜の歌」の旋律との対比で浮き上がるカールの心の絶叫。あんなに心を抉られる「歓喜の歌」を聞いたことはありません。カールもルドウィクも間違いなくお互いを愛していて、お互いにそれは理解しているからこそ感じるすれ違う二人の痛み。自分の言葉を聞き入れてもらえないカールの絶望の言葉が物語前半の青年ルドウィクが聴く力を失いつつある自分に絶望する「試練」と同じ旋律で歌われ、二人が同じように拳銃をとるのも見ていて辛くてたまりません。

 カールは一命を取り留めますが、自分の夢を叶えるためにルドウィクと袂を別つことになり、それ以来会えてないことをルドウィクは手紙に綴ります。カールの言葉に耳を傾けれなかった自分を後悔する言葉とともに。そんな折に自分の元に訪ねてきたある青年。自分が驚かしてしまったその青年が落としていった美しい「新しい音楽」の楽譜。ドミニカに会いにきた青年はそのときの青年だったのです。青年がマリーに名乗った名前はシューベルト。ルドウィクが夢見た新世代の音楽はルドウィクからマリーへの贈り物。手紙でマリーが今はどのように生き、どんな夢を抱いているのか問いかけるルドウィク。

 ルドウィクと別れた後、女性の姿で建築博覧会に赴いて拒絶されてしまい、女性建築家として活躍する夢は果たせなかったマリー。しかし彼女はシスター・ドミニカとして女学生相手に教鞭をとる仕事に就き、次世代へと夢を繋いでいるのでした。夢破れながらも自分が当初思っていたのとは別の形で後世に夢を引き継いだルドウィクとマリー。たった三度しか出会うことのなかった二人を結んでいた夢追い人の同志としての強い絆。絶望の中の静寂の中で自分の音楽を見つけたときと同じように死後の世界へと旅立っていくルドウィク。ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章のメロディに乗せられた「ピアノ」(피아노) で歌われるマリーからルドウィクへの鎮魂歌で締められるラスト。


2019年プレスコールより「ピアノ」(피아노)
キム・リョウォン
 

 「悲愴」の第2楽章はそのお題目からイメージする内容と反して、とても温かくて優しいメロディが印象的ですが、悲しみを乗り越えた先に優しさがあるのかもしれません。そんなピアノの旋律の優しさに包まれて涙するラストでした。

追加されたエピローグ

 初めての観劇では、「先生の音楽は永遠です」というドミニカの言葉とともに暗転、幕となったのですが、2回目の観劇となった6月29日ソワレの回ではなんとラストの後にエピローグが追加されていました。多分このエピローグは観ていない方が多いかと思うので、「『ルドウィク』好きの方々に伝えなければ!」とちょっとした使命感。

 暗い部屋の中に入ってくる一人の青年と少年の姿。青年は軍人となったカール。少年はカールに「ここが父さんが住んでいたところ?」と聞き、カールはそうだと息子に優しく伝えます。部屋の中央に置いてあるカバーのかかったピアノを見つける少年。少年はカバーをめくり、ピアノを弾いてみます。「音がいい!」と言って父に笑顔を見せる少年、優しく笑顔を返すカール。少年はさらにピアノに書かれた名前を見つけて父にこう告げます。

「ルドウィク・ファン・ベートーヴェン。僕の名前がここにあるし、これは僕のもの?」
「ルートヴィヒ。お前の大伯父さんの名前だよ」

父の伯父と同じ名前をなぜ自分につけたのかを尋ねるルドウィク少年。カールは伯父が自分にたくさんの愛を注いでくれたから、それを覚えておくために息子に同じ名前を与えたのだと伝えます。自分の名前の中には大伯父さんがいるんだと無邪気に喜び、「お母さんにも教えてあげなくちゃ!」と母を呼んで部屋を駆け出すルドウィク少年。走り去る息子を見送った後、カールは愛おしげにピアノに触れて微笑み、暗転。

 まさか公演終盤にきて変更が入るなんて思っていなかったので、この追加エピローグは思い掛けないうれしいサプライズでした。さらにグズグズに泣いたのは言うまでもなく...。このエピローグが追加されたことにより『ルドウィク:ベートーヴェン・ザ・ピアノ』というタイトルはベートーヴェンの名前をいただいたピアノが見守った「ルドウィク」の物語ということなのかな、と思ったりもしました。


2019.6.29 カーテンコールより
チャ・ソンジェ、チョ・ファンジ、キム・ジユ、イ・ジュグァン、カン・スヨン

感想まとめ

 ストーリー、音楽、演出、それに俳優さんたちの演技。どれを取っても『ルドウィク』は本当に素敵な作品だなぁとこの観劇レポを書いていてしみじみ思いました。物語の主人公が夢見て、夢破れて、さらに次世代へと夢を繋いでいくベートーヴェンとマリーという点で、ある程度年齢を重ねた大人の人たちに広く強く心に響く作品なのではないかと思います。公演終盤までチケットの売れ行きがなかなか伸びず少し寂しい思いをしていたので、このレポが更なる再演の際に作品を観る後押しに少しでもなればと願っています。私自身、是非再演があればまた観たい作品です。


  1. 物語の終盤にこの青年はシューベルトであることが判明しましたが、彼がこのタイミングで弾くのもシューベルト作曲の「アヴェ・マリア」です。

  2. レポの途中で書くと話の腰を追ってしまうので注釈に。俳優さんによる役作りの違いもかなり印象的で。低く深い声がすごく好みなテイさんは繊細でカールに対する世話焼きっぷりがとても細やかですが、ジュグァンさんは少し頑固で偏屈でありながら愛嬌のある豪胆な雰囲気。