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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇記録】2020年下期観劇まとめ

What I saw in Theatres 2020

 COVID-19のパンデミックにより世界規模で大激震を受けたパフォーミング・アーツの世界。そんなご時世を受けて私自身の観劇も激減した2020年でしたが、なんだかんだ言いながらも観劇が私の生活の大きな一部分を占めていた一年だったな、と振り返っています。下半期の観劇数は様々な映像配信と待ちに待った『ビリー・エリオット』の再演のおかげで上半期以上の観劇数に。個別のレポを書いた作品はそちらへのリンクを、個別レポを書いていないものは簡単に感想も書いています。

 2020年上半期の観劇記録はこちらから。



July - 7月

ミュージカル『BLUE RAIN』@ Hakuhinkan Theatre, Tokyo《2020.7.11ソワレ》

ミュージカル『BLUE RAIN』@ Hakuhinkan Theatre, Tokyo《2020.7.11ソワレ》

 ジョン・ルキペール今井清隆さん
 テオ:吉野圭吾さん
 ルーク:東山光明さん
 ヘイドン水夏希さん
 サイラス:木内健人さん
 エマ池田有希子さん

 全く観劇ができなかった4月から6月を経て、実に4ヶ月ぶりの生観劇。久しぶりの観劇で観たのは2019年の夏にソウルで観てとてもよかったチュ・ジョンファ(脚本・演出)&ホ・スヒョン(作曲)夫妻タッグのミュージカル『ブルーレイン』の日本語翻訳上演でした。まだ劇場公演が再開してまもない時期の上演で、客席は一席飛ばしの千鳥格子配置での座席プランだったのに加えて、座席と座席の間に透明のビニールシートのパーティションを設置。舞台上も俳優さん同士の接触を最小限にするように、感染者を出さないように細心の注意が払われ、やりすぎなくらい徹底的な対策と随所に工夫が見られた公演でした。透明のビニールスクリーンを使った飛沫対策と演出は狭い水槽の中で精一杯生きる登場人物達を連想させて、この作品とは合っていた気がするけど、やっぱり遮るものなしで俳優さんの表情を見たいと思ったのは事実。でも、なにせ本当に久しぶりの生観劇だったので、なんだかそれだけで胸がいっぱいになってしまって泣いてしまったのを覚えています。映像もいいけどライブに代えられるものじゃないと強く感じ、ただただ上演してくれたことに感謝する公演でした。今井さんが演じる悪いパパがとても良かったです。

ナショナル・シアター・ライブ『夏の夜の夢』(A Midsummer Night's Dream)《2020.7.12》


National Theatre Live『A Midsummer Night's Dream』公式トレーラー
 

 ツイッターのタイムラインに流れてきた「ビヨンセ神輿」というキーワードがめちゃくちゃ気になって連日の観劇。ニコラス・ハイトナー演出のNTライブ『夏の夜の夢』は妖精の王オーベロンと女王ティターニアの立ち位置をオリジナルから入れ替えるというかなり大胆な演出変更をしているのですが、この作品のざっくりとした粗筋を知りながらも初めて観た私には従来の配役で観たら多分違和感を感じてしまうんだろうなぁというくらいしっくりきました。オーベロンとティターニアを演じる俳優さんはシーシアスとヒポリタを演じる俳優さんと同じ。それによって妖精の世界の出来事と人間の世界の出来事に対称性が生まれて、とてもニクい演出になっているのですよね。そしてこの演出ならでは感想だと思うのですが、最後は全て丸く収まってめでたしめでたしの大円団に一見思えるけど、ディミートリアスとヘレナは果たして本当にこれで「幸せだからよし」としてしまっていいのかなぁと思ってしまいました。いたずらな妖精パックを演じていた俳優さんはこの作品のためにエアリアル空中ブランコ)を身に付けたとのことで、驚異の身体能力に感服。観客がセットの一部となるイマーシブな演出は少しミュージカル『Here Lies Love』を彷彿とさせました。現場にいたら凄く楽しそうだけど、こういう作品だからこそ活きる映像ならでの利点があるなぁと感じたのでNTライブで映像化してもらったことには本当に感謝です。

August - 8月

K-Musical On Air:ミュージカル『ファンレター』(팬레터)《2020.8.31》

September - 9月

K-Musical On Air:ミュージカル『女神様が見ている』(여신님이 보고 계셔)《2020.9.1》

K-Musical On Air:舞台『赤壁』(적벽)《2020.9.2》

K-Musical On Air:ミュージカル『ザ・フィクション』(더 픽션)《2020.9.3》

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2020.9.12ソワレ》

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2020.9.13マチネ》

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2020.9.19マチネ》

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2020.9.20マチネ》

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2020.9.21マチネ》

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2020.9.22マチネ》

ミュージカル『ビフォアー/アフター』(BEFORE/AFTER) @ Southwark Playhouse, London《2020.9.26マチネ》

ミュージカル『ビフォアー/アフター』(BEFORE/AFTER) @ Southwark Playhouse, London《2020.9.26マチネ》

 ベン:ハドリー・フレイザー (Hadley Fraser) さん
 エイミー:ロザリー・クレイグ (Rosalie Craig) さん

 ビリー祭絶賛開催中の合間に実は密かに観ていたミュージカル『ビフォアー/アフター』のリーディング公演。完全無観客でオンライン配信のみだったこの二人ミュージカルでベンとエイミーのカップルを演じるのは私生活でもご夫婦であるハドリーさんとロザリーさんのご夫妻。ほぼバストアップのショットのみなのに、歌と台詞と表情の演技だけでこれだけ引き込ませてくれるロザリーさんとハドさんは凄いの一言。オンライン配信オンリーならではの演出部分もあり、そんなところも興味深く拝見しました。おそらく地球の反対側から視聴する人たちがいることも考慮していただいたのだと思うのですが、観劇したマチネの公演は英語字幕ありの公演。ベンの年齢設定が上に引き上げられたのは演者の実年齢に考慮してそうなったんでしょうか?オフ・ブロードウェイで上演された『ダディ・ロングレッグズ』を観たときも思いましたが、リアル夫婦が演じるラブストーリーってそれだけでエモいですよね。

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo《2020.9.27マチネ,ソワレ》

November - 11月

ミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』(어쩌면 해피 엔딩) 《2020.11.2》

ミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』(어쩌면 해피 엔딩) 《2020.11.2》

 オリバー:チョン・ソンウさん
 クレアハン・ジェアさん
 ジェームス:ソン・ジョンワンさん

 2020年に日本でも初演を迎えた韓国創作ミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』の有料配信がインターパーク・グローバルでも取り扱いありだったので仕事を早めに切り上げて視聴。あっという間に作品に引き込まれて、手元にティッシュを用意せずに視聴を開始したことを後悔するぐらい涙で鼻水がズビズビに。ソンウさんが演じるオリバーはコミュ障だけど目がとてもとても雄弁で、その眼差しの演技に何度も心を撃ち抜かれました。ジェアさんのクレアもめっちゃかわいいし、ジョンワンさんのジェームスはとても優しそうで。仕事がめっちゃ激務で疲れ果てていたのですが、可愛らしい二人の温かくて切なくて純粋な愛の物語に大変癒されました。そして国外脱出できるようになった暁には絶対チェジュ島に行って、蛍探しもといおっちょみょんごっこをしに行くのだと心に誓ったのであります。

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Umeda Arts Theater, Osaka《2020.11.8マチネ,ソワレ》

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Umeda Arts Theater, Osaka《2020.11.13マチネ,ソワレ》

鋭意執筆中

ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) @ Umeda Arts Theater, Osaka《2020.11.14マチネ》

鋭意執筆中

NAVER公演ライブ:ミュージカル『私とナターシャと白いロバ』(나와 나타샤와 흰 당나귀)《2020.11.14マチネ》

 ジャヤ(子夜):イ・ハナさん
 ペクソク(白石):ソン・ウォングンさん
 サネ(男):チャン・ミンスさん

 『あなたの初恋探します』、『SMOKE』、『BLUE RAIN』と次々に韓国創作ミュージカルの小劇場作品を日本に輸入している制作会社atlasさんが次に手掛ける作品として発表した『私とナターシャと白いロバ』。正確には発表された日本語版のタイトルは『僕とナターシャと白いロバ』ですが、初演から詩人ペクソクを演じているカン・ピルソクさんのイメージが強く、なんとなく一人称は「私」を使いたくなるのです。韓国では3回目の再演を迎えた本作。先ほど名前を挙げたカン・ピルソクさんは続投されているものの、今回の再演ではかなりがらりとキャストが入れ替わったナナヒン。NAVER公演ライブの生中継のキャストのみなさんも今シーズンから出演されているフレッシュな顔ぶれでの生中継となりました。会場が今までの劇場と比較すると横幅が広い忠武アートセンターの中劇場ブラックに移動したことも影響しているのでしょうが、セットもこれまでとは少し違った雰囲気。とはいえ、ピアノの旋律が胸に染みる切なくてノスタルジックな雰囲気はそのままです。ジャヤはペクソクに甘すぎると思うのですが、ペクソクが彼女の世界に色を与えた唯一無二の存在であることは間違いなく、彼女は間違いなく幸せだったのだろうなとも思います。

KOREA WEEK IN TOKYO 2020:ミュージカル『ラフマニノフ』(라흐마니노프)《2020.11.27》

KOREA WEEK TOKYO 2020:ミュージカル『ラフマニノフ』(라흐마니노프)《2020.11.28》

 セルゲイ・ラフマニノフ:パク・ユドクさん
 ニコライ・ダーリ:チョン・ドンファさん

 KOREA WEEK IN TOKYOのイベントの一環で大好きな韓国創作ミュージカル『ラフマニノフ』の映像が日本語字幕付きで配信されました。『ラフマニノフ』は2020年にキャストを一新して上演され、その舞台の様子を収録したDVDも販売されていますが、今回配信されたのは本作の初演である2016年に東崇アートセンターで行われた公演を収めたものです。初演キャストは二人のラフマニノフと二人のダーリ先生でみなさん好きな俳優さんばかり。今回の配信のユドクさんのラフマニノフとドンファさんのダーリ先生のペアは唯一生で観劇できなかった組み合わせだったので、今回二人の演技を日本語字幕付きで観れたのはとてもうれしかったです。手負いの小動物の雰囲気があるユドクさんのラフマニノフに、明るくてマイペースなドンファさんのダーリ先生。努力しながらも苦しんで傷ついている人が癒されて前を向きはじめるまでの過程を描いたカタルシスを得られる物語。日本語字幕がついた無料配信ということもあり、今までこの作品を観たことにない人たちにも広くこの作品を知ってもらえたのもとてもうれしかったです。

December - 12月

コンサート『ホリプロミュージカル・コンサート』《2020.12.13ソワレ》

 今年のビリー達が出演すると知り、完全に彼ら目的でチケット購入。残念ながらチケット争奪戦に敗れてしまったのでオンライン配信での鑑賞です。ホリプロさんの60周年記念コンサートということもあり、榊原郁恵さんを主演に据えたミュージカル『ピーター・パン』の上演から始まったホリプロのミュージカル作品の歴史を辿るような構成になったコンサートになっていました。私はというと、オケの演奏によるオープニングのミュージカルメドレーの「Electricity」の部分で早くも涙目。ビリーたちの出番は本当に瞬く間に終わってしまいましたが、この日のためにしっかり準備してくれた特別な4人のダンス、しっかりと堪能させてもらいました。

演劇『ピーター&ザ・スターキャッチャー』(Peter and the Starcatcher) @ New National Theatre, Tokyo《2020.12.19ソワレ》

演劇『ピーター&ザ・スターキャッチャー』(Peter and the Starcatcher) @ New National Theatre, Tokyo《2020.12.19ソワレ》

 2014年のお正月にオフ・ブロードウェイで観てとても面白くて印象に残っていたプレイが日本初上陸するという情報を友達に教えてもらい、久しぶりに足を運んだ新国立劇場ネバーランドはどうやって生まれたのか。ピーター・パンとフック船長はなぜ対決するようになったのか。『ピーター・パン』の前日譚となる『ピーターと星の守護団』を舞台化した本作。オリジナルの演出とは完全に一緒ではないものの、演劇ならではの表現が随所に散りばめられた楽しい雰囲気はオリジナルの演出を踏襲していたのがとてもうれしかったです。とても面白かったという印象は強烈に残っていたものの、結構細かい部分はすっかり忘れていたのでフレッシュな気持ちで楽しめました。(←)一年を締めくくる観劇納めの作品としてはとても良い作品に恵まれたな、と思います。

まとめ

2020年累計観劇回数:47回(30演目)
 ミュージカル:36回、ストレートプレイ:7回、コンサート:2回、その他:2回
 国内:18回、海外:13回、
 映像:16回 (無料配信:9回、有料配信:3回、映画館:4回)
 最多観劇作品:『ビリー・エリオット』:13回

 観劇はじめは例年のごとく元旦でしたが、観劇納めが大晦日ではないのは少なくとも7年ぶりぐらい。劇場での観劇回数が激減する一方、去年は0だった舞台を映像に収めた作品の鑑賞や配信視聴も増えたのも今年の大きな特徴。舞台の映像化作品はまた生の舞台とは別の魅力があるのは事実だと思います。ただ、やっぱり舞台は生で観劇をすることを前提に演出がされているもの。舞台の映像化や配信はありがたいと思う一方、生で観劇することに代替になるものではないと強く感じた一年でもあります。一日でも早く、また劇場で心のままに歓声をあげて観劇できて、興奮冷めやまぬまま観劇仲間のみなさんと語り合える日がくることを願って。

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