日本初演以来ずっと大好きなミュージカルである『ネクスト・トゥ・ノーマル』(Next to Normal, 以下N2Nと略記)のAチーム千秋楽を観てきました!極上の音楽と歌とお芝居を浴びてきた2時間強。そんなチームAのキャストのみなさまは以下の方々でした。
ダイアナ:安蘭けいさん
ゲイブ:海宝直人さん
ダン:岡田浩暉さん
ナタリー:昆夏美さん
ヘンリー:橋本良亮さん
ドクター・マッデン:新納慎也さん
N2Nの簡単な作品紹介は3月末にAチームで観た時の観劇レポの記事に書いていますので、もしよかったらこちらも併せてご覧ください。
これまでご用意されたことが一回もなかったので、「まあ外れるだろう」とあまり期待せずにダメ元で申し込んだ東宝ナビザーブの先行抽選チケットでしたが、ご用意いただいた席は当選メールを三度見くらいするくらい私的超良席でした。もはや今年のチケッティング運はすべて使い果たした感がありますが、大好きな作品でこのキャストの千秋楽ですのでここで使い果たしていたとしても後悔はないです。運をここに振り分けてくれてありがとう、チケットの神様!!!
感想
さてこれまでのこの作品の観劇レポでも書きましたが、この作品はネタバレを踏んでしまうと面白さが半減してしまう可能性が高いので、これから初めてN2Nを観るという方は十分にご注意ください。できれば初回観劇はまっさらな状態で!
再演N2Nのマイ初日は本当に久しぶりに大好きな作品をまた観られたよろこびと、それを演じるキャストのみなさまがあまりにも素晴らしいので完全に脳みそが湧いたうわ言を心の中で喚き散らしながら観ていました。今回は新生N2Nを観るのも3回目となり、さらにNチームというまた全然趣きの異なる対比対象がある状態。解像度が上がった状態で改めてAチームのN2Nを観劇すると、ダイナミックでエネルギーがほとばしる中に繊細に描きこまれたディテールが鮮やかで、今回はそれを息を飲みながら見詰めていた感があります。千秋楽の挨拶で岡田さんがAチームはそれぞれの個性がとても強いけどそれを安蘭さんが地続きの演技でまとめてくれた、というような主旨のことを話されていましたが、Aチームのグッドマン一家はそれぞれの個性が尖りつつもどうしようもなく彼らが一緒に暮らしてお互いに影響を与えあってきた家族だということを強く感じさせられました。
(以下、ネタバレが含まれるのでご注意ください。)
なんというか、Nチームのグッドマン家のみなさまが全員自分の内側に色々と溜め込む系の人たちなのに対して、Aチームのグッドマン家のみなさまは発散系、爆発系なのですよね。安蘭さんのダイアナは自分の母親に活発(High-spirited)だと言われたというエピソードに納得しかないし、昆さんのナタリーの「自分も狂ってしまうのでは」という不安の発露方法も外向的でとても母親と似ている。岡田さんのダンも疲れ切っているのが隠しきれない正直者で、主張するときはかなり強め。海宝ゲイブが自分の存在を誇示するときは生命力とエネルギーに満ち溢れているのに時折無機質な存在のように表情が削げ落ちて透明化するところは、躁鬱の差が激しいダイアナにも、普段は穏やかで献身的だけどたまに感情を爆発させるダンにも似ている。うまく言語化できませんが、この人たちはどうしようもなく家族なんだなぁ、と思わずにはいられなかったです。
そんな気持ちで観ていると不思議なもので彼らの姿形もどこか似ているような気がしてきて、Wish I Were Hereの安蘭ダイアナと昆ナタリー、I am the One (Reprise)の岡田ダンと海宝ゲイブ、特に後者の色濃く血の繋がりを感じるそっくり具合には異常なほど心臓がドキリとしました。安蘭さんのダイアナと岡田さんのダンの間に息子がいたら、本当に海宝さんみたいな姿をしているのではないだろうか。Nチームで望海ダイアナ、渡辺ダン、甲斐ゲイブに感じたことを同じくAチームでも感じました。そこまで考えてのキャスティングだとすると、本当に凄い。そしてそう思わせてしまう俳優さんたち凄い。
初回Aチームを観たときは家を出ていく安蘭さんのダイアナがかっこよく清々しくも少し身勝手にも思えたのですが、改めて観た岡田さんのダンはポキッと折れてしまう一歩手前のギリギリのところでぶら下がっているように思ったので、ダイアナが家を出て行く選択をしたのはダンに一人で自分と向き合ってもらう時間を作らなければという彼女なりの愛情もやはりあったんだろうなと思います。安蘭ダイアナってしっかりと手を握っておかないとあっという間にどこか手の届かない所へ自由に飛び立っていってしまいそうな雰囲気があるので、深層心理では共依存状態になっても彼女を繋ぎ止めておきたい岡田ダンの気持ちもわかるような気がするんですよね。ゲイブのことがなければ安蘭ダイアナはしばらく自分のキャリアを追求しそうだし、二人が家庭を築かなかった未来は割とあり得たような気がするので。
上手くまとめられないので千秋楽公演で特に印象に残った部分を開き直って箇条書きで。
- Everything ElseやCatch Me I'm Fallingで昆ナタリーが自分の中のグチャグチャな気持ちをピアノにぶつけている感じが本当に自分の中での感情が飽和して抑えきれないという感じがとても痛々しかった。瞳が涙で潤むのに絶対に溢れはしないことにナタリーのギリギリの葛藤が感じられて辛い。でもリサイタルの時にヘンリーにもらったガーベラの茎を椅子の上で精神安定剤のように片手でくるくる転がしていたのかわいい
- ドクター・ファインとしてタマネギおかっぱヘアで登場した新納さんが皮の椅子の座席をバンバンと叩いてダイアナに席を進める姿がおばちゃん味があってかわいい。かと思えばダイアナの妄想の中でドクター・ファインが白衣のボタンを外した途端に急にダダ漏れる色気何事
- Perfect for Youの橋本ヘンリーが思いの外だいぶ目がいっちゃっていてかなりラリっていて驚いた。気持ちが本物でもこんな状態で好きだと言われてもナタリーは素直によろこべないよね。君、そういとこあるよねヘンリー(←)
- 安蘭ダイアナが母親が活発すぎてPTAから追い出されたと言って新納マッデン先生の膝を叩いたときの音がめっちゃいい音した。豪快に笑っていたけど気まずくなって叩いた膝を少しさすってみる安蘭ダイアナがかわいい
- I'm Aliveのラストでキーを上げるのは前回観劇の時と同じだったけど、熱が乗っていてめっちゃロングトーンだった海宝ゲイブ。挨拶で「今日めっちゃ吠えてたね」と安蘭さんに言われる(笑)
- 安蘭ダイアナと昆ナタリーの感情が昂ぶった時にジワーッと目に涙が溜まって黒目がちになるのが凄く似ていた。そんなところも親娘
- Better than Beforeで何気なくナタリーが手にしていたオルゴールをダンが鬼気迫った形相で力任せで奪い取る必死さが痛い
- 悲しい心情を歌っているナンバーでは透明化する海宝ゲイブだけど、Hey #2が展開する裏側でダイアナが失って記憶を手繰り寄せるために無言でアルバムを繰っている姿を階段に腰掛けて見詰めているゲイブの表情は苦渋に満ちていて辛い。ゲイブが家の二階にいるのか、一階にいるのかも多分何か意味があるのだと思うのだけど、まだ自分の中で整理できていない。中途半端にその間に座っていることにもきっと意味があるはず
- How Could I Ever Forgetで両親が自分のことを思い出している中、暗い影の中で海宝ゲイブがずっとダンを見詰めて涙を密かに流していたのが切なすぎた
- Why Stay?の後で崩れ落ちてヘンリーに縋り付くナタリーとナタリーをそっと背中から包み込むように優しくハグしてあげるヘンリーとそうはなれないダイアナとダンの対比が辛い
- Make Up Your Mind / Catch Me I'm Falling (Reprise)でより一層人間味が増すドクター・マッデン。新納ドクターの心のうちはずっと私の中で疑問だったのだけど、あの場面での彼の行動は医者としてのプライド、威信を賭けて普段踏み込まない領域まで踏み込んでいるのでは、という気がした。本来ドクター・マッデンは患者との距離感の保ち方がとても上手な人だけど、それが初めて上手くいかなくなった瞬間なのかも。ロックスターに例えられる凄腕の医師としてのプライドもあるけど、なんか思わず関わってしまうような不思議な魅力と引力が安蘭ダイアナにはあるよね、とも思った
- Maybe (Next to Normal)でダイアナにハグされて、恐々と自分もダイアナの背中に手を添えようとしたけど手が震えて結局できない不器用な昆ナタリーが切ない。そんな躊躇を吹っ飛ばすようにダイアナにはもっとナタリーをギュウギュウに抱きしめてあげてほしい
- Lightでダンとナタリーとヘンリーがバースデーケーキを囲んで邪気なく笑っているのがめちゃくちゃグッとくる。ナタリーとヘンリーには未来に対する心配とかひとまず置いといて今を思いきっり楽しんでほしい。いろいろ考えたくなるお年頃だから難しいとは思うけど
Aチーム東京千秋楽ということでカーテンコールの際にキャストのみなさんからそれぞれ挨拶がありました。キャストのみなさんそれぞれ作品愛に満ち溢れていて、N2Nオタク同志(勝手に認定)としてはそんなところもうれしい限り。まだまだ全然観たりないし、今回の素晴らしいキャストも、別のキャストでもこの作品をいっぱい観たいので、新納さんのリクエスト通り「アホほど」再演熱烈希望とアンケートに書いてみました。次はもっと近い将来に再演があることを祈っています!くどいですが、次は是非ロングランで!!!