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【観劇レポ】ミュージカル『フリーダ・カーロ -折れた支柱-』(FRIDA KAHLO) @ Tokyo Metropolitan Theatre, Tokyo《2022.7.2ソワレ》

ミュージカル『フリーダ・カーロ -折れた支柱-』(FRIDA KAHLO)

 日本オリジナルの小劇場系ミュージカルを意欲的に発表している劇団さんとして注目している劇団TipTap。オリジナル作品公演期間は短いことも多く、観劇チャンスを逃してしまうことも多いのですが、そのTipTapさんのミュージカルフリーダ・カーロ -折れた支柱-』(FRIDA KAHLO)が3年振りに再演されるということで東京芸術劇場シアターウエストで観てきました。ちなみに私は今年2022年に初めてTipTapサポーターズに入会したのですが、フリーダのチケットはその特典で初めて抽選に応募したチケットでもあります。なんと最前列センターのお席をご用意いただき、至近距離から色々と食らってきました。結論から書くととてもとても良かったです。キャストのみなまさまは

 フリーダ・カーロ彩吹真央さん
 ディエゴ・リベラ今井清隆さん
 レフ・トロツキー石川禅さん
 イサム・ノグチ:遠山裕介さん
 アレハンドロ・ゴメス・アリアス:田村良太さん
 クリスティナ:綿引さやかさん
 もう一人のフリーダ:MARIA-Eさん
 鎌田誠樹さん
 飯野めぐみさん
 田中なずなさん

でした。

感想

 作中でなぞられるメキシコの女性画家フリーダ・カーロの人生。彼女の名前と自画像は何点か知っていましたが、こんな壮絶な人生を送っていたとは想像していませんでした。苦しみながら生きていても彩吹さんが演じるフリーダは凛としていて美しく。激情と静かにヒタヒタと溢れる感情の対比がとても心に残り、フリーダに男女共に魅了される気持ちがとても良くわかる気がしました。

 男女を問わず、多数の浮名を流したフリーダ。そんな中でもディエゴの存在はとても特別だったんだろうなぁ、と作品を観ていると感じます。自分事としてはなかなか理解しがたいけど、愛は理屈じゃないんだろうなぁということも。火柱を上げるようなディエゴやイサムとの恋愛がある一方で、別れても優しく包みこむようなアレハンドロとの繋がりがあったり、お互いを尊敬しやや緊張感のある距離も心に残るトロツキーとの関係も印象に残りました。でも不思議と一番心に刺さったのは飯野さんが演じる看護師とのフリーダの関係かもしれません。手術を繰り返し、満身創痍で体がボロボロのフリーダは痛み止めの注射を定期的に打つ必要がありましたが、その注射を打つのが看護師である彼女の仕事。フリーダが痛み止めを要求する頻度がどんどんと高くなり、看護師の彼女が自分が主人にできることがとても限られていていることに苦しみ、その絶望に耐えられずにフリーダの下を去る場面は本当に胸が痛く。


ミュージカル『フリーダ・カーロ』PV
 

 情熱的な赤いドレス姿のもう一人のフリーダを演じていたMARIA-Eさんも素晴らしかったです。絵画に刻まれたフリーダの肖像。誰より近くで苦しみながらも生きる自分を見詰めていたもう一人のフリーダ。周囲の人々を魅了したフリーダはとても外向的でありながらも同時にとても内向的でもあって、その妙なアンバランスさも彼女の魅力だったように思います。作中でもう一人のフリーダが存在するのは、フリーダが「二人のフリーダ」というタイトルの絵を描いていることにちなんでいると思いますが、二人が同じ舞台に立つことによってフリーダの二面性がよりよく表現されていたように思います。

 特に名前を挙げていない出演者のみなさまも全員素晴らしく。メキシコの情緒あふれる少し猥雑な雰囲気のあるセットもの雰囲気も素敵で、その狭い空間で時に楽器演奏もしながら生き生きと躍動するキャストのみなさまを観れるのも作品の魅力の一つでした。全員が歌う「死者を歌おう」の歌い出しのメロディが印象的なミュージカルナンバーは私のお気に入りナンバーの一つです。

 最前列で観劇できたことも大きいと思いますが、この公演では大学路ミュージカルを観劇している時に感じていたような狭い空間で歌声の圧を真正面から浴びる贅沢を久しぶりに感じた気がします。とても良かったのでブルーレイも購入済み。手元に届くのが楽しみです。

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