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【観劇レポ】ミュージカル『ザ・デビル』 (더 데빌, The Devil) @ Dream Art Center, Seoul《2017.2.25マチネ》

2017/2/25 マチネの『ザ・デビル』キャスト

  2月末に2017年に新演出版になった韓国のロックミュージカル『ザ・デビル』(더 데빌, The Devil) を観てきました。私が観た回のキャストは写真の通り、

 X-WHITE : コ・フンジョン さん
 X-BLACK : イ・チュンジュ さん
 JOHN FAUST (ジョン・ファウスト) : ソン・ヨンジン さん
 GRETCHEN (グレッチェン) : イ・ハナ さん

でした。

 『ザ・デビル』(以下、デビル)は2014年の初演公演の時に私が大好きな俳優様がジョン・ファウスト、Xの両役で出演していたこともあり、動画や音源を観たり聞いたりしているうちにそのロックな楽曲のかっこよさにとても惚れ込んで、再演されたら是非観たいとずっと思っていた作品でした。そんな期待に期待を募らせて観に行った作品だったのですが…どうも2017年の再演版デビルは私が期待していた初演版とはちょっと違う作品になっていたようです。

  初演当時は3人劇だったデビルの登場人物はジョン・ファウスト、グレッチェン、Xの3人。登場人物の名前からピンときた方もいるかと思いますが、デビルはゲーテの戯曲「ファウスト」を下敷きにしたミュージカルです。ファウストに登場する悪魔はメフィストフェレスという名前ですが、デビルにはメフィストフェレスは登場せず、代わりにXという謎の存在が登場します。「ファウスト」では、神とメフィストフェレス錬金術ファウストが誘惑に負けて悪の道へと身を堕とすか否かを物語の冒頭で賭けますが、Xはいわばその神と悪魔の賭け、人間の二面性、背中合わせの光と闇を象徴するようなキャラクターというのが私の理解です。

 キャスト表からもわかるとおり、再演版ではXのキャラクターはX-WHITEとX-BLACKという二役に分かれています。初演と再演の一番大きな違いと言えるこの点ですが、どうも初演時の「わかりにくい」というレビューを受けての変更点のようです。しかしこの変更で本当にデビルのストーリーがわかりやすくなったのかと聞かれると、初演版を観ていない私には比較のしようがないのですが、「かえってわかりにくくなったんじゃないの…?」という妄想疑惑が…。

 ちなみに韓国版Interparkに掲載されているあらすじは下記の通りです。

暗闇と光は一つ
光が強い時暗闇は消え去り、暗闇が深いなら光が眠っている
善良な人間は暗闇を長く耐え切れずに結局光に向かうだろうから・・・

「人間の心の中の暗闇が光を超えた瞬間
 世の理は新たに並び替えれなければならない」

光と暗闇は本来一つの存在
X−WhiteとX-Black
彼らは人間を賭けて勝負を繰り広げる

賭けの対象になった人間ジョン・ファウスト
彼はウォールストリートの前途有望な株式ブローカーで
彼にはいつも彼のそばを守るグレッチェンがいる

しかし株価が大暴落したブラックマンデーの後
すべてが変わることになり・・・

すべてを失い、墜落するようなジョンが失意に陥った隙を狙って
彼に接近して誘惑の手を伸ばすX−Black
レッチェンが引き止めるのにもかかわらず
ジョンはX-Blackの提案を受け入れ、次第に彼に侵蝕されていく

ジョンが堕ちるほどグレッチェンの心身は疲弊していき
最後の善の意志であり、彼の最も大切な存在である
レッチェンまで無視しようとする
ジョンの姿を通じて、X−Blackは自分の勝利を確信するようになるが…

 同じXを演じる役者さんが黒い衣装でジョンを甘言で誘惑し、白い衣装でグレッチェンに対して救いの手を差し伸べることによって善と悪は元を辿るとひとつの存在であることや運命は選び取るものによってその姿を変えることを象徴していたと思っていたのですが、XがWHITEとBLACKに分裂したことにより、そのメッセージが薄れてしまった印象があります。果たしてあらすじを読んでいない人にもこの設定が伝わっているのかどうか?ここは物語の根底に関わる結構重要なテーマなだと思うんですが、「『わかりやすさ』のためにそこ犠牲にしちゃっていいの?というか本当にわかりやすくなったの???」感が拭えずもやもや。単に私の理解力の問題なのかもしれませんが、観劇中絶えず「なんか思ってたのと違う」という思いがどうしても拭えず、もやもやしたまま観劇を終えてしまいました。今回の再演では出演しなかったご贔屓俳優様たちで妄想をたくましく膨らませ過ぎてしまったのも多分いけなかったんだと思います。

 とはいいつつも、キャストのみなさまの歌唱力は抜群ですし、やっぱりロックな楽曲は超かっこいい!ミュージカルを観ているのではなく、コンサートを聴きに来たのだと割り切ればかなり聞き応えがあります。欲を言えば、せっかくのかっこいいロックな楽曲なのだからもう少し疾走感が欲しいところ。ただ、今回追加されたクラシックの曲をベースにしたゴシックな曲の雰囲気も割と好きです。

 個人的な収穫はずっと観たいと思っていたソン・ヨンジンさんのジョン・ファウストが観れたこと。期待通りロックでノリノリなマイクスタンド・パフォーマンスを見れて満足!闇堕ちしたヨンジンファウストはとてもギラギラした感じが迫力があり、登場時のいい人〜な雰囲気とのギャップが良かったです。やっぱり芸達者。好きです(突然の告白)。グレッチェン役のイ・ハナさんはヨンジンさん以上にギャップに驚き。登場時はその透明感溢れるソプラノに「パンツスーツより白いワンピースのが似合いそうなお嬢さんだな。オペラ座のクリスティーヌとか似合いそう」などとぼんやり思っていたのですが、終盤の「MAD GRETCHEN」は凄い迫力でめっちゃかっこいい。二人のX役のイ・チュンジュさんもコ・フンジョンさんも声の圧が素晴らしく、毎回のことながら韓国ミュージカル界の歌ウマ俳優様の層の厚さを実感せずにいられないのでした。

 正直私の理解不足もあって消化不良に終わっちゃったので、もう1回くらい終盤に観たかったなぁ・・・。