先月に引き続き、今月末もマチソワで韓国創作ミュージカルの『インタビュー』(인터뷰, Interview) をソウル大学路のドリームアートセンターで観劇してきました。このブログを書き始めてから同じ作品の感想を公演期間中に複数回書くのも、そもそも同じプロダクションのレポを複数回書くのもなにげに初めて。今回の『インタビュー』の再演は2018年9月30日までですが、まだまだこれからも観劇回数を重ねていく予定なので、今回の観劇レポも個人的な備忘録の色合いが強いネタバレ満載レポになる予定です。最初はマチソワをまとめて1つの記事で書こうと思っていたのですが、マチネ分を途中まで書いた段階ですでに3000文字を超えていたので今回はマチネとソワレでレポを分けることにしました。今回私が観たマチネの回のキャストのみなさまは下記の方々です。
ユジン・キム (유진 킴) : パク・ウンソクさん
シンクレア・ゴードン (싱클레어 고든) : チョン・ドンファさん
ジョアン・シニアー (조안 시니어) : チェ・ムンジョンさん
今回お初なのがウンソクさんのユジン先生とムンジョンさんのジョアン。ドンファさんのシンクレアに関しては、8月8日に先月末に観劇したキャストと全く同じ組み合わせ(ゴンミョンさんの先生、スヨンさんのジョアン)の公演がV LIVEやNAVER TVで生中継されたので、その時を含めると3回目。ウンソクさんのユジン先生は8月半ばからの途中合流。そして公演序盤ではキム・ジュヨンさんとキム・スヨンさんのほぼダブルキャスト状態だったジョアンのキャスティング。観劇後に調べてみて初めてわかったのですが、実はドンファさんとウンソクさんの組み合わせもドンファさんとムンジョンさんの組み合わせはこの回が初めてだったようです。そんなことは全然感じなかったのでちょっとびっくり。先月末の観劇レポはこちら。
感想
(以下、ほぼネタバレしかないのでご注意ください)
ウンソクさんのユジン先生
ウンソクさんのユジン先生は、後から追加キャストが発表されたタイミングで今回の再演で新たにキャスティングされた俳優さんの中で一番「観たい!」と思った俳優様。『ペスト』(페스트) と『レッドブック』(레드북) の二作品とこれまで拝見した作品の数は多くはないのですが、低く響くいい声と表情豊かな演技がとても印象に残っていてこれからも積極的に観ていきたいなと思っていた俳優さんです。
ウンソクさんのユジン先生は、最初から最後まで公平な目で真実を見極めようとする精神科医の先生としての目線を感じながらも、「それでもマットを救ってあげたい」という優しさを感じる凄く好みのユジン先生でした。ウンソクさんの先生の好きなポイントはいくつかあるのですが、まず最初はシンクレア(マット)を一番最初に部屋に招き入れる時に私が観た先生の中で唯一温かい握手で彼を迎え入れるところ。「遺書」(유서) の冒頭のオフィーリア殺人事件の犯人に対する想いを独白する部分の台詞も、他のユジン先生は
하지만 나는 믿는다... 아니, 믿고 싶다
だけど私は信じている... いや、信じたい
となっている台詞の部分が、ウンソク先生の場合は
하지만 난 믿고 싶다... 아니, 믿는다
だけど私は信じたい... いや、信じている
と順番が逆になっていたのが印象に残り、そんな部分もウンソクさんの先生らしいなぁと感じたり。「ユジンの反撃」(유진의 반격) でシンクレアの名前と『人形の死』の草稿が書かれたノートをなぜマットが持っているのかを問うときも他の先生は責め立てながら問い詰める雰囲気が強いのですが、ウンソク先生はマットの左右の上腕を真正面から掴んで顔を覗き込み、真実を慎重に見極めるように、諭すように問いただすような雰囲気で。特にここの部分が好きで、この問いかけ方を見た瞬間に一気にウンソク先生のことが大好きになりました。ラストシーンで、最初のシーンと同じように「シンクレア・ゴードン」に扮するマットが再び事務所のドアをノックして挨拶をする場面の後も、フッと息を吐いてマットに微笑みかける横顔が素敵で。随所に先生の優しさを感じる役作りがとても印象に残る温かいユジン先生でした。
ムンジョンさんのジョアン
チェ・ムンジョンさんは今回が完全に初めましての女優さん。ムンジョンさんのジョアンは、とても純粋だけど同時に同じくらい無邪気な残酷さが印象に残る役作りでした。「アナベル・リー」(애너벨 리) の曲中の
나는 아이였고 그녀도 아이였으나
私は子供で彼女も子供だった
という詞がとてもぴったりだと感じるドンファさんのマットとムンジョンさんのジョアンの組み合わせ。マットに対して「金髪の教育実習生のシンクレア・ゴードン先生とロンドンに行って小説を書く」夢を打ち明けた後、悲しそうに、心細そうに「姉さん、じゃあ僕は?」と聞くマット。それに対して信じられないという気持ちを通り越して、自分がやっとこの苦境から逃れられることをマットが祝福してくれないことに対して傷ついたような表情をしていたのが強く印象に残っています。純粋で自分勝手で幼くて残酷。そんなひどくアンバランスなジョアンでした。
ドンファさんのシンクレア
前述の通り、今回が3回目になるドンファさんのシンクレア(マット)。観るたびにどんどん演技が進化していると感じるドンファさんには毎回驚かされています。今回の観劇で感じたのは、ドンファさんのマットはジョアンに対する不信感がほとんど表に表出していなくて、それが無意識にかなり追いやられているようだということ。言い換えるならば、ジョアンに対する殺意がほとんど感じられないのです。「人形の死」(인형의 죽음) でマットがジョアンを手に掛けてしまうところも、初回の観劇とライブ中継ではジョアンに手渡されたぬいぐるみの人形越しにジョアンを殴っていたのですが、今回の観劇では人形を使って殴る演技はなくなっていて、かわりに「どこにも行かせやしない」と強く強く抱きしめすぎた結果ジョアンを絞殺してしまったと感じるような演技になっていました。「姉さんを逃がしはしない」という強い想いと意志は感じながらも、殺すつもりは全くなかったように感じるドンファさんのマット。その後のジョアンの亡骸を揺さぶり、必死に「姉さん」と呼びかける姿、自分がしてしまったことの重大性に気づいて茫然自失とした後に声を殺しながら泣き崩れる姿。本当に本当に痛ましくて仕方がありません。
同時にドンファさんのマットは、ジョアンに対する想いが身内としての姉に対する思慕なのか異性愛なのかで言うと、限りなく前者寄りのようにも感じます。記憶の中のジョアンの呼びかけによって眠っていたマットの人格が目を覚まし、マットの中の人格が次々と入れ替わった後に再現されるジョアンとマットの「約束」の記憶。ジョアンの「あなたが守ってくれるんでしょう?」という問いかけに対して、小さいながらもコクコクと首を縦に振って頷く幼い日のドンファマットには「姉さんは僕が守るんだ」という確かな強い意志が感じられて。マットはジョアンの弟という設定ですが、マットがジョアンの兄のように感じる瞬間でもありました。
ラストシーン直前の「遺書 (Reprise) 」 。ドンファさんのマットはジョアンと一緒に部屋を出る前に彼女が積み上げた積み木の家をしばし見つめて、とても嬉しそうな表情をしていました。全体的に家族の愛情に飢えていたと感じるドンファさんのマット。環境が違っていれば、おそらく穏やかに大好きなポーのような物語を書くことを夢見る青年として暮らせただろうにと感じずにいられないのがとても切ない役作りでした。
ドンファウッディに翻弄されるウンソク先生
緊張感溢れるシリアスな展開が息つく間もなく続く『インタビュー』ですが、ほっこりする瞬間も。今回のマチネの萌えポイントはやっぱりドンファウッディに翻弄されるウンソク先生。ウッディの人格が表に出てきた後、ウッディはユジン先生が持っているノートを絵本と勘違いして先生にそれを見せて欲しいと要求しますが、絵本は見たいけど見知らぬおじさんは警戒するウッディ。ドンファウッディは先生に後ろを向くように要求。渋々ながらもそれに従うウンソク先生。「絵本」だと思っていたノートが文字だけだとわかり、先生を嘘つき呼ばわりするドンファウッディ。ギクッと固まるウンソク先生。また、ドンファウッディはウンソク先生に対してエア銃撃戦を仕掛けますが、全くの棒立ちで反応できないウンソク先生。めげずに相手が反応するまでエア鉄砲を打ち続けるドンファウッディ。仕方なしにウンソク先生が変なうめき声をあげると、「こいつ、演技下手でつまんねぇな」という表情をしてエア銃撃戦をすぐやめるドンファウッディ。それを見て「なんだよ、せっかくやってやったのに」とも言いたげにゲンナリ渋い顔をするウンソク先生。今の所、ウンソク先生は私が観たことのあるユジン先生の中で「子供の扱いが下手ランキング」暫定1位です(笑)
カーテンコール
反応がとても正直で素直な韓国のミュージカルファンたちですが、今回のマチネは客席のほぼ全員がスタオベ状態!カーテンコールでジョアン役の俳優さんとシンクレア役の俳優さん、シンクレア役の俳優さんとユジン先生役の俳優さんがお互いの労をねぎらってハグを交わすのも、緊張感が続く『インタビュー』のほっこりポイント。ドンファさんとウンソクさんのハグはウンソクさんが顔をくしゃくしゃの笑顔にしてそのままドンファさんを持ち上げてちょっとした抱っこ状態に!ドンファさんはちょっとびっくりして照れていました。「ドンファさんでも照れることがあるんだ!」(←)とちょっと珍しいものを見た気分に(笑)前回まではカーテコールの写真撮影OKだったのですが、今回はカーテンコールを含めて撮影NGになっていたのでカメラにおさめられなくて残念。
おまけ:アナベルリーカード
今回の『インタビュー』のマニアカード1、その名前も「アナベルリーカード」は劇中のセットでも大きな意味を持つ電球と登場人物達の名前がその下に表記されていて、観劇するたびに光のスタンプを押してもらって明かりがだんだん灯っていくデザインになっていてとてもかわいい。
ノーネイムとウッディの電球のデザインが全く一緒になっているのがすごく気になるんだけど、ここはあんまり深読みするポイントではないような気も...。確認してみましたが、マニアカードの電球の形と傘のデザインと、実際のセットのデザインが一致しているわけでもなかったので。そしてウッディの綴りはWoodyではなかろうか...。
インターパークのサイトによると、特典は以下のとおり。
- 3回観覧でインタビュー出演俳優のフォトカードセットを1セット
- 5回観覧で全席40%割引券を1枚
- 7回観覧でインタビュー出演俳優のポストカードセットを1セット
- 10回観覧で全席50%割引券を2枚
- 15回観覧でR席招待券1枚とモンスターカード1枚
「モンスターカード」とはなんぞや、と思っていたら所持者は全席40%オフで観劇できる模様。そもそも韓国のインタパークサイトで予約すると、再観覧割引だと30%オフで観劇できるのでそこまでお得感はないけどいいなぁ。グローバルサイトからでも再観覧割引使えるようにしてほしい...。
今回のマチネが3回目の観覧日だったのでフォトカードセットを無事ゲット。せっかくなので並べて写真を撮ってみました。
キャストボードの写真とも、劇場においてある写真パネルともまた違ったお写真!私が観れない予定のヨンジュンさん、ヨンギュさん、ソヒョンさんがカードが入っていた順番に並べると1列に並ぶの、何の因果だろう...。(←たまたまです)入っていた順番は多分各役ごとの年功序列順。カードはだいたいクレジットカードくらいのサイズです。好きな俳優さんのカードをお財布とかに忍ばせておくんですかね?
[2021/2/26修正]
先生の名前の表記を英語風読みのユージン・キムから来日公演時に発売されていた台本準拠のユジン・キムに訂正しました。