急遽2019年の公演が決まった二人ミュージカルの『ダディ・ロング・レッグズ』(키다리 아저씨, Daddy Long Legs)。キャストがかなり入れ替わった今季の公演、3回で7人いるキャストのうち6人を観る計画を立てていたのですが、急遽1回追加して合計4回12月中に観てきました。観た今季キャストのみなさんと日程は以下のとおり。
- [2019.12.1 ソワレ]
ジルーシャ:カン・ジヘさん
ジャーヴィス:キム・ジチョルさん - [2019.12.7 ソワレ]
ジルーシャ:ユ・ジュヘさん
ジャーヴィス:カン・ピルソクさん - [2019.12.27 ソワレ]
ジルーシャ:イ・アジンさん
ジャーヴィス:ソン・ウォングンさん - [2019.12.31 ソワレ]
ジルーシャ:ユ・ジュヘさん
ジャーヴィス:キム・ジチョルさん
2016年にオフブロードウェイでこの作品を初めて観劇した時にかなり詳しく作品の流れをレポで書いているので作品の予習をしたい方は以下をどうぞ。
今季のレポは各回の俳優さんの組み合わせの印象を中心に書いてみたいと思います。以下、一部作品のネタバレが含まれるのでご注意ください。
泣き虫な二人
カン・ジヘさんは前シーズンからの続投ですが観るのは今季が初めて。今まで噂に聞いた通りとても感情豊かで涙脆いジルーシャでした。とにかく本当にめちゃくちゃよく泣くジルーシャなので何度ももらい泣きしてしまいました。ジチョルさんは今季合流組のジャーヴィス。多分ジャーヴィス役は似合うだろうなと思っていたので楽しみにしていたのですが、期待以上にラブコメが似合ったハマり役でした。特に印象的だったのは二幕で自立心に芽生えたジルーシャの手紙に散々振り回された後で「Humble Pie」を歌うジチョルさんのジャーヴィス。「ジミー・マクブライド!」と涙目で憎しみをこめて歌い上げた後にジルーシャの手紙の名前が書かれていると思われる部分を何回もデコピンの要領で叩いたせいで手紙に傷をつけてしまったジャーヴィス。そのことに動揺したのか、ポロリと溢れた涙。「え、そこで泣いちゃう?」と少し笑ってしまいながらも一生懸命で必死なジチョルジャーヴィスに少しキュンとしてしまいました。ある意味泣き虫で似た者同士のジヘジルーシャとジチョルジャーヴィス。とても可愛い組み合わせの二人でした。
しっかり者の年下女子に振り回される独身貴族
ジュヘさんのジルーシャとピルソクさんのジャーヴィス坊ちゃんは両方とも今季この作品に初キャスティングされたお二人。周囲のピルソクさんファンの間でこの作品へのキャスティングを望む声は多かったのですが、今までジャーヴィス役にキャスティングされた俳優さんたちは長身揃いの韓国ミュージカル界でも特に背の高い俳優さんたち揃いだったのでピルソクさんの出演は少し意外でした。これまで観た韓国のジャーヴィスたちは全員どこか少女漫画のヒーローのような非現実感を漂わせていた人が多かったのですが、ピルソクさんのジャーヴィスは「こういう少し気難しそうな青年実業家、いそうだな」という雰囲気。失礼ながら、いい年をしたおじさんが若い女の子に振り回されまくっている姿も妙にリアリティがあったのが印象に残っています。ジヘさんのジルーシャは感情豊かでファニーながらもちょっと強気で凛とした知的な雰囲気を感じるジルーシャでとても好みのジルーシャでした。ここで「ちょっと気が強めのジヘジルーシャと泣き虫ジチョルジャーヴィスの組み合わせってどうなんだろう?」と思ってしまったことによって後からチケットを追加することに…。
天真爛漫少女と恋に不器用な紳士
ウォングンさんのジャーヴィスは私にとっては2017年以来の2年ぶり。2年前に観た時に好きだったクリスマスイヴにジルーシャから送られてきた手紙に書かれた「愛を送りながら」という追伸に挙動不審なくらいにウロウロして動揺する姿とか、卒業式の後にひっそりと誇らしげな表情でジルーシャのことを思う姿は健在でとてもうれしかったです。低くていい声、澄まし顔でちょこちょこと大人気ないアレコレを入れてくれるところが狡いウォングン坊ちゃん、好きです。みんな大好きぱぱことイ・ジョンヨルさんの娘さんということで勝手に注目しているイ・アジンさん。アジンちゃんのジルーシャはキラキラと輝く目が本当に可愛い天真爛漫なジルーシャで、ちょっとのんぼりした雰囲気を感じるところもとにかくとてもとても可愛いジルーシャでした。ジルーシャとジャーヴィスの身長差、年齢差のどちらも見ているほうをほっこりとした気分にしてくれる二人でした。
子供っぽいアジョッシと大人びたアガシ
大晦日かつジチョルさんの千秋楽だった4回目の今季のキダリアジョッシ。孤児院育ちという境遇のせいか、ジュリアやサリーのような同年代の少女たちより自立心が強くて大人びたジルーシャ。ジュヘさんのジルーシャは彼女のそんな一面が特に印象に残る役作り。対照的にジチョルさんのジャーヴィスは悔しさから涙目になったり、「愛を送りながら」の追伸にあからさまに照れて頭を掻いてみたり、ジルーシャの言動に不満を抱くとわかりやすく口元がへの文字になったりと「大人気ない」を通り越してどこか憎めない子供っぽさを感じる役作り。そんな二人の『ダディ・ロング・レッグズ』の物語は、ジルーシャと成長とともにジャーヴィスも成長していく物語でした。2019年の最後の観劇に幸せな気持ちで劇場を後にできるこの作品を選んでよかったです。