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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇レポ】ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』(스토리 오브 마이 라이프, The Story of My Life) @ Baegam Art Hall, Seoul《2019.2.9マチネ, 2019.2.10ソワレ》

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 いよいよ明日に迫った韓国版ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』(스토리 오브 마이 라이프, The Story of My Life, 以下SOML) の今季の千秋楽。元々は2月から始まる別作品を中心に観るつもりで予定していた今年の初渡韓。色んな方々のSOMLの感想を聞いているうちにどうしても今季の全キャストが観たくなってしまい、観劇予定を大幅に変更してSOMLを2回観てきました。私の観劇日程とキャストのみなさまは以下のみなさまでした。

  1. [2019.2.9マチネ]
     トーマス・ウィーバー:カン・ピルソクさん
     アルヴィン・ケルビー:チョン・ウォニョンさん
  2. [2019.2.10ソワレ]
     トーマス・ウィーバー:チョ・ソンユンさん
     アルヴィン・ケルビー:イ・チャンヨンさん

 今思ったんですが、この二組のペアはなんとなくキャスボ写真の顔の向きがお揃いですね(笑)一言でそれぞれのペアの感想を書くとすると、ピルソクさんトーマスとウォニョンさんアルヴィンのペアは今まで私が思ったことがあまりないSOMLの解釈が頭に残ったペアで、ソンユンさんトーマスとチャンヨンさんアルヴィンは私がイメージするSOMLの物語の王道ど真ん中を行くペアでした。

 去年のクリスマス前に観たもう1組のトーマスとアルヴィンのレポはこちら。

 SOMLの作品紹介と2018-2019年シーズンのキャスト紹介はこちらを参照ください。

(以下、ネタバレが多く含まれているのでご注意ください)

ピルソクさんトーマスとウォニョンさんアルヴィンの物語

 少年時代のふんわりとした雰囲気と大人になってからの気難しい芸術家のイメージが強いピルソクさんのトーマス。成長するにつれて、意識的に冷静であることを是とするがために却って神経質になってしまい、それで育てたコンプレックスが原因でアルヴィンと距離を置くようになったのだと感じます。最初はそんなピルソクトムがアルヴィンを思い出しながら心を整理する物語としての印象が強かったこの日の公演。冒頭、トーマスがアルヴィンに対しても自分自身に対しても怒っている状態から紐解かれていくトーマスの物語。

 ソク様のトーマスの演技ですごく好きなのは大学入試のために書いた短編小説、「The Butterfly」(나비) をアルヴィンに読み聞かせる際のストーリー・テリングの巧さ。歌声もとても素敵なのですが、片手で象った蝶を小枝に停まらせたり、ふわふわと宙を飛ばせたりの身振り付きで「The Butterfly」の物語を語ってくれるので、自分を矮小な存在だと思っている小さな蝶の冒険の様子が目の前に浮かぶように感じるのです。そんなトーマスの語る物語を最初は神妙な顔でずっと見守っていたウォニョンさんのアルヴィン。蝶が「なぜそんなに速く飛べるのですか?」と風に訪ねたときに風が

내 몸의 힘은 공기의 흐름일 뿐
私の体の力は空気の流れだけ
그 작은 날개로 시작돼
その小さな羽で始まる

니 날개로
君の羽で

と答えたとトーマスが語るとパアッと笑顔になったのがとても印象に残りました。ウォニョンさんのアルヴィンは今まで観たことがあるアルヴィンの中でも普通の人にはない独特の価値観を持っていそうな不思議な雰囲気を感じたアルヴィン。そんなウォニョンさんのアルヴィンの雰囲気と「The Butterfly」に対する彼の反応を見ているうちに、「アルヴィンは風を起こす蝶になりたくて、実際に蝶になって海を見に来たんだ」という考えが頭に浮かび、その考えが頭を離れなくなりました。

 アルヴィンは力強く吹く風が眩しかった。そんな風の力の源である蝶になって風が連れて行ってくれる海を見たいと思った。蝶はアルヴィンでトーマスは風。海はトーマスが紡ぐ、矮小なものだと自分で思っている人々の物語。

 トーマスがアルヴィンのお父さんのお葬式の前に、自分が物語を書くためにアルヴィンは必要なかったと言った瞬間、一番傷ついた顔をしたウォニョンさんのアルヴィン。それはトーマスが自分が彼の力になっていることをムキになって否定したからじゃないのか。でも、もう一度風の力となる「羽ばたき」を起こすためにアルヴィンは橋の上から飛び立ったのではないだろうか。アルヴィンは自分の「羽ばたき」がどんな影響を与えたのかを見届けるために、そして再び海を見るためにトーマスの元にやってきたのではないだろうか。

 そんなことを観劇中も観劇後もずっと考えていたピルソクさんのトーマスとウォニョンさんのアルヴィンの物語でした。

おまけのメモ
  • 「アルヴィンらしい」遊びは紙を投げて最初に着地した順に1位、2位、3位にする競争
  • レミントン先生のお葬式の潜入方法は仰向けにほぼ寝転がって足からのスライドインの潜入。手をつかずに腹筋背筋の力だけで反動をつけて起き上がって到着。できるか不安そうな苦笑いと長い溜めの後、見事手をつかずに起き上がることに成功したソク様に対して客席から拍手喝采。拍手が起きたことについて言及して茶茶を入れるウォニョンアルヴィン(かわいい)
  • 雪合戦はトーマスが外に出てくる前から雪玉を作成しはじめる臨戦態勢のウォニョンアルヴィン。雪玉を作らないまでも紙の束を自分に引き寄せて身構えるソク様トム。双方遠慮なしに当てまくる
  • 「The Greatest Gift」の本屋の精霊の召喚のために両手と腰を反対方向に突き出す変な踊りをして、それをどんどん高速化させるウォニョンアル。真似をするソク様トム。その踊りをカーテンが落ちた後の映像中継時に自ら始めるソク様。ソク様のふにゃふにゃダンスに対して「そうじゃない、こうだ!」と言わんばかりにお見本付きで指導を入れるウォニョンさん

ソンユンさんトーマスとチャンヨンさんアルヴィンの物語

 大好きだけど身近であるゆえに甘えて蔑ろにしてしまい、疎遠になってしまった大切な人。そのことを後悔をしても、その人はもう近くにはいない。トーマスとアルヴィンのようにその別れが死別という形をとっていなくても、大好きな人を大切にできなかった後悔の気持ちはある程度歳を重ねた人たちにとっては身に覚えのあるほろ苦い感情だと思います。目を背けていた大切な人と後悔の気持ちに向き合い、後悔する自分自身をも丸ごと受け入れて前を向こうとする。この観劇レポの冒頭部分でも書きましたが、ソンユンさんのトーマスとチャンヨンさんのアルヴィンは私が考えるSOMLのメインテーマのど真ん中を突き進むペアでした。

 観ている回数が一番多いわけではないのですが、実は私、トーマス単体としてはソンユンさんのトーマスが一番好きです。クールで冷静な人物を装って強がっているけど、その実は情に厚くて脆いソンユンさんのトーマス。物語の後半に進むにつれて自責の念と後悔の気持ちに押しつぶされてボロボロに泣き崩れていくソンユントーマスを見ていると、「あんなにアルヴィンのことが大好きなのに、大切にしないからそうなるんやんか〜(T_T)」と思いつつも感情移入して一緒においおい泣いてしまい、愛情を上手く表現できないソンユントーマスの不器用さも愛おしく感じるのです。ソンユンさんのトーマスで特に好きなのは、この物語後半にかけての心情の吐露と、やっぱりアルヴィンに「The Butterfly」を読み聞かせる場面。物語の冒頭部分をアルヴィンに聞かせた後、心底不安でしょうがないといった表情でアルヴィンをチラッと見た後、アルヴィンに「続けて」と後押しされて調子に乗り始めるところとか大好きです。私、ソンユンさんの歌声も凄く好きで、中でもソンユントーマスの「The Butterfly」は大好きです。前々回の公演の動画ですが、せっかくなのでソンユンさんが歌う「The Butterfly」の動画を貼っておきます。

 
2015-2016年 韓国版ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』より「The Butterfly」
この頃はソンユンさんは改名前でチョ・ガンヒョンさんという名前で出演されていたんですよね

 

 クールなソンユンさんのトーマスとは対照的に喜怒哀楽の感情がとてもわかりやすくて表情豊かなチャンヨンさんのアルヴィン。チャンヨンさんのアルヴィンで好きなところは、ずばりこの感情表現の豊かさ、素直さだったりします。トーマスのことはもちろん、お父さんもお母さんも大好きだということが全身から伝わってくるようなチャンヨンさんのアルヴィン。「People Carry On」(계속 살아가)で表情も声も震わせて薄れていく母の記憶を悲しむ姿とか、「Independence Day」(이제 떠나, 기다려) でトーマスに一方的に約束を反故にされたときも「アンニョン、トム」とちゃんと挨拶して電話を切りながらも悲しい気持ちに蓋をしないでとても寂しそうな顔をするところとか。トーマスが大学に行く前に二人が川のそばで会話するときに、「会いたくなるだろうな」とぎこちない笑顔で言う姿とか。素直に寂しいという感情を表現しながらもそれが重くなりすぎることがないのはチャンヨンさんのアルヴィンがとても優しいからな気がして、そんなチャンヨンさんのアルヴィンがとても好きです。

 このソンユンさんとチャンヨンさんは実際に同学年でもあり。そして二人ともSOML最多出演組。同い年ならではの気楽さに加えて勝手知ったる仲ならではの二人の空気も感じられて、そんなところもとても素敵なペアでした。この二人のペアで考えた場合、アルヴィンはトーマスの記憶の中のアルヴィンと考えるのが自然だとは思うんですが、実はトーマスがとても脆いこと、トーマスが自分のことを大切に思っているのを知っているアルヴィンがトーマスのことを心配して、彼の様子を見にきたのだったらいいなぁと考えてしまいます。

おまけのメモ
  • トムに「必要だったらここにいるから」といいながら書類机に横になり、いびきをかいて寝始めるチャンヨンアルヴィン
  • レミントン先生のお葬式の潜入方法はロープを引いて辿ってからの、側転3回転。危ないからスペースを空けるようにアルヴィンに指示してから3回転したソンユントムは体が大きいだけに3回転で書類机に迫る大移動
  • 滝の前での「ゴールイン」遊びで、アルヴィンに「教えてあげるよ」といい近づくトーマスを避けるアルヴィンの攻防の動きが踊りのようだとどちらかが言い始め、向き合ってその変なダンスを笑いながらし始める二人
  • 雪合戦はガチンコ勝負。運動量がかなり激しく舞台奥の机の周りも駆け回ったり、飛び乗って移動したり。どちらかというとチャンヨンアルヴィン攻勢で、逃げ回るのに疲れて先に根を上げて倒れるソンユントーマス

2018-2019年シーズンのSOML観劇まとめ

 観た回数としては3回と私の中のリピート案件の中では少なめですが、その3回でそれぞれに個性溢れる6人のキャスト全員をコンプできたことでかなり満足度の高い3回だった今季のSOMLの観劇。すみません、ちょっと強がりました。本当はもっともっと観たかったです。(T_T) しかしながら2年ぶりにSOMLを観て、改めてこの作品の魅力と作品への愛を再確認した充実の3回の観劇でした。今年の日本公演もこれから控えていますが、ソウルでも来年のクリスマス・シーズンも、その次のクリスマス・シーズンも是非再演をお願いしたいです!


2018-2019年 韓国版ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』ハイライト動画