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劇場に行くためにどこでもドアが欲しいミュージカルオタクの観劇記録と観るためのあれこれ

【観劇記録】2020年上期観劇まとめ

What I saw in Theatres 2020

 COVID-19のパンデミックにより世界規模で大激震を受けたパフォーミング・アーツの世界。そんなご時世を受けて私自身の観劇も激減した2020年でしたが、なんだかんだ言いながらも観劇が私の生活の大きな一部分を占めていた一年だったな、と振り返っています。まずはまだまだ生観劇メインで年初から観劇ペースを飛ばしていた2020年の3月まで。びっくりすることに2020年の第二四半期は観劇数ゼロだったので、3月までの観劇記録イコール2020年上期の観劇記録だったりします。個別のレポを書いた作品はそちらへのリンクを、個別レポを書いていないものは簡単に感想も書いています。



January - 1月

ミュージカル『スウィーニー・トッド』(스위니 토드, Sweeney Todd) @ Charlotte Theater, Seoul《2020.1.1マチネ》

ミュージカル『スウィーニー・トッド』(스위니 토드, Sweeney Todd) @ Charlotte Theater, Seoul《2020.1.1マチネ》

 スウィーニー・トッド:ホン・グァンホさん
 ラヴェット夫人:リナさん
 ターピン判事:ソ・ヨンジュさん
 アンソニー:イム・ジュニョクさん
 ビアス:シン・ジュソプさん
 ジョアンナチェ・ソヨンさん

 我ながら観劇はじめに凄い作品をチョイスしたなぁと思いますが、2020年最初の観劇作品はロンドン、フリート街の「悪魔の理髪師」を題材にしたミュージカル『スウィーニー・トッド』。ソンドハイム先生の難しいナンバーを難なく歌い上げるグァンホさんの素敵なバリトンを堪能しました。スウィーニーは執念深く猟奇的な殺人犯の役ではあるものの、どこかコミカルな部分もある役なのでグァンホさんの魅力を堪能するのにはとてもいい役かもしれません。アジュンマ(おばさん)感は全然なかったけど、リナさんのラヴェット夫人もよかった。でもやっぱり一番印象に残っているのは最後の最後で色々とかっさらっていくトビアス役のジュソプさん。「油断していると食われる!」というオーラがあってとてもゾクゾクするよいトビアスでした。

ミュージカル『女神様が見ている』(여신님이 보고 계셔) @ Uniplex, Seoul《2020.1.1ソワレ》

ミュージカル『女神様が見ている』(여신님이 보고 계셔) @ Uniplex, Seoul《2020.1.1ソワレ》

 ハン・ヨンボム:ソン・ドゥソプさん
 イ・チャンソプ:ホン・ウジンさん
 リュ・スノ:チョン・フィさん
 チョ・ドンヒョン:チョ・プンレさん
 シン・ソック:カン・ギドゥンさん
 ピョン・ジュファ:ソン・ユドンさん
 女神:チェ・ヨヌさん

 年末年始の旅の最後の観劇作品となったのは大好きな2017-2018年シーズンからの続投キャストのみなさまの組み合わせでの『女神様が見ている』。この作品で一番それぞれの役で一番回数を多く観ている俳優さんたちが集まった組み合わせというのもあるのでしょうが、一番自分の中でしっくりくるキャストなのですよね。この回は、ギドゥンさんのソックが手の縄の拘束を解いた後に縄を投げ捨てるのを失敗して、舞台袖に投げた縄が壁にぶつかって勢いよく跳ね返ってくるというハプニングが。それを率先していじるウジンさんのチャンソプを見て、舞台を降りた二人の先輩後輩の力関係を垣間見たような気がしたのでした。

演劇『エレファント・ソング』(엘리펀트 송, The Elephant Song) @ Yes24 Stage 3, Seoul《2020.1.25マチネ》

ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』(스토리 오브 마이 라이프, The Story of My Life) @ , Seoul《2020.1.25ソワレ》

ミュージカル『ファンレター』(팬레터, Fan Letter) @ Doosang Art Center, Seoul《2020.1.26マチネ》

ミュージカル『ミスト』(미스트, MIST) @ TOM Theatre, Seoul《2020.1.26ソワレ》

ミュージカル『ミスト』(미스트, MIST) @ TOM Theatre, Seoul《2020.1.26ソワレ》

 ナ・ヘイン:チェ・ヨヌさん
 アキラ:キム・ジョングさん
 キム・ウヨン:アン・ジェヨンさん
 イ・ソン:ペク・ギボムさん

 『ミスト』は韓国創作ミュージカルでおそらく一番題材にされている大日本帝国統治下の朝鮮を舞台にしたミュージカル。なおかつ朝鮮独立運動の活動家であるアキラと朝鮮貴族の家出身でありながら日本の統治を支援する側に身を置いたウヨンの対立を軸に物語が展開するので、日本人が観るのがつらい系の作品のはずなのですが。ずっと好きだった幼馴染(ヘイン)に報われない一途な思いを傾けながら、ポッと出の謎の男(アキラ)に横から愛しの君を掻っ攫われて強烈なジェラシーを爆発させるジェヨンさん(ウヨン)を堪能できるという意味ではとても美味しい作品でした。まずヘインとウヨンの二人とアキラとの出会いからして不憫すぎて。ヘインにプロポーズするために緊張した面持ちでソワソワしてヘインを待っていて、彼女に「話したいことがあるんだ」と切り出した瞬間に明らかに重症人のアキラ登場でプロポーズ強制終了。またヨヌさんのヘインが本当に1ミリも関心をウヨンに向けてくれないつれなさなのがよいのですよね。(←)

February - 2月

ミュージカル『チェス』(Chess the Musical) @ Tokyo International Forum, Tokyo《2020.2.8ソワレ》

落語といろもの @ 浅草演芸ホール, Tokyo《2020.2.9》

 会社の先輩に誘われて、後輩たちと一緒に初めての寄席体験。また会場や出演者が違えばまた雰囲気が違うのでしょうが、深呼吸の息の音さえ躊躇うような小劇場作品の会場の雰囲気とは180度異なる入退出も飲食も自由のゆるい雰囲気にはちょっとびっくりしました。舞台の楽しみ方のお作法も色々ですね。

ミュージカル『ミスト』(미스트, MIST) @ TOM Theatre, Seoul《2020.2.15マチネ》

ミュージカル『ミスト』(미스트, MIST) @ TOM Theatre, Seoul《2020.2.15マチネ》

 ナ・ヘイン:キム・リョウォンさん
 アキラ:ジョンミンさん
 キム・ウヨン:アン・ジェヨンさん
 イ・ソン:チェ・ソクジンさん

 ジェヨンさんのウヨン以外はキャスト総入れ替えになった2回目。キャストが変わるとまた雰囲気がガラッと変わるのは大学路の小劇場ミュージカルの醍醐味ですよね。リョウォンさんのヘインはヨヌさんのヘインと比較すると幼馴染としてではあるけどウヨンを大切にしていている感じがしたので、ウヨンの不憫度が若干下がるのですが、個人的には徹底的に報われないヨヌさんヘインとの組み合わせのほうが好みです。(←)

演劇『幻想童話』(환상동화) @ Dongduk Women's University Performing Arts Center, Seoul《2020.2.15ソワレ》

演劇『幻想童話』(환상동화) @ Dongduk Women's University Performing Arts Center, Seoul《2020.2.15ソワレ》

 愛の道化師:ソン・グァンイルさん
 戦争の道化師:キ・セジュンさん
 芸術の道化師:ユク・ヒョヌクさん
 ハンス:ペク・ドンヒョンさん
 マリー:ユン・ムンソンさん

 観た人からの好意的なレビューが多くてとても楽しみにしていた演劇作品。演出も映像使いも舞台ならではの表現もあってとても面白い作品でした。物語はわちゃわちゃしてて楽しかったりしんみりしたり。悲劇ともハッピーエンドとも言えないような独特の余韻を残す終わり方は、この作品の持つ不思議な雰囲気にぴったりだと思いました。

ミュージカル『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』(빈센트 반 고흐, Vincent Van Gogh) @ Yes24 Stage 1, Seoul《2020.2.16マチネ》

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 ヴィンセント:チョ・ヒョンギュンさん
 テオパク・ジョンウォンさん

 一度是非観てみたいと思っていたヒョンギュンさんのヴィンセント。感情の波に揺さぶられてすっかり終わった後にはグッタリしてしまいました。ジョンウォンさんのテオもお兄さんの生き辛さを追体験しているみたいでとても辛かった。作中、ヴィンセントが客席側に恋人のシエンがいるように見立てて歌う場面があるのですが、ヒョンギュンさんヴィンセントの視線をがっつりもらえる席に座っていたので無駄に緊張してドキドキしました(笑)

ミュージカル『ブラザーズ・カラマーゾフ』(브라더스 까라마조프, Brothers Karamazov) @ Daehakro Ja-U Theatre, Seoul《2020.2.16ソワレ》

ミュージカル『ブラザーズ・カラマーゾフ』(브라더스 까라마조프, Brothers Karamazov) @ Daehakro Ja-U Theatre, Seoul《2020.2.16ソワレ》

 フョードル:シム・ジェホンさん
 ドミートリィ:ソ・スンウォンさん
 イヴァン:アン・ジェヨンさん
 アリョーシャ:キム・ジュニョンさん
 スメルジャコフ:パク・ジュニさん

 開幕直後にも関わらず、驚きの完成度で通えなかったことが悔やまれるミュージカル『ブラザーズ・カラマーゾフ』。中二病を発症していると思われる韓国創作ミュージカル作品は数多いですが、ここまで盛大に拗らせている作品はなかなかないのではと思います。主に拗らせているのは私の推しが演じているイヴァンなんですが。「神はいない」と言いながら誰より神の存在を意識しているイヴァン。物語の冒頭でフョードルが言う「俺を殺したのは誰だ」と言う台詞の意味が最後の方は全然違う意味に聞こえてくるから不思議です。それは物理的な実行者なのか、そのように仕向けた者なのか。舞台上で物語の中心になっていない人達もそれぞれ思い思いの表情と仕草で舞台上で展開されている内容を凝視してたり、目を逸らしてたり、スルーしてたりでめっちゃ面白いので目が全然足りなかったので本当に通いたかったです。

ナショナル・シアター・ライブ『リーマン・トリロジー』(The Lehman Trilogy)《2020.2.20》

ミュージカル『ハンドレッド・デイズ』(HUNDRED DAYS) @ Shinjuku Theater Moliere, Tokyo 《2020.2.23マチネ》

ミュージカル『ハンドレッド・デイズ』(HUNDRED DAYS) @ Shinjuku Theater Moliere, Tokyo

 アビゲイル:木村花代さん
 ショーン藤岡正明さん

 ミュージカル回想録と銘打たれた本作。アビゲイルとショーンは実在する存命のご夫婦で、お二人の出会いとこれまでの軌跡をミュージカル仕立てでパフォーマンスしたのがオリジナルのショー。言い換えるならベンソンズという夫婦バンドのセットリストが二人の出会いを振り返る回顧録になっているのです。音楽はちょっとブルーグラスっぽいロック寄りのフォーク。アビゲイルの爆発的なパワーをショーンが真摯に受け止めるという感じで、バンドでの立ち位置や関係性もそれを反映している感じが面白かったです。

ミュージカル『女神様が見ている』(여신님이 보고 계셔) @ Uniplex, Seoul《2020.2.29マチネ》

ミュージカル『女神様が見ている』(여신님이 보고 계셔) @ Uniplex, Seoul《2020.2.29マチネ》

 ハン・ヨンボム:ソン・ドゥソプさん
 イ・チャンソプ:ホン・ウジンさん
 リュ・スノ:チョン・フィさん
 チョ・ドンヒョン:キム・デウンさん
 シン・ソック:カン・ギホンさん
 ピョン・ジュファ:ソン・ユドンさん
 女神:ハン・ボラさん

 今季のヨボショ見納めはウジンさんのチャンソプの千秋楽。お初のデウンさんのドンヒョン、ギホンさんのソック、ボラさんの女神様も素敵でした。笑えて泣けて、しんみりとするなかにも温かい余韻を残してくれる作品で、やっぱりとても好きな作品です。

ミュージカル『ブラザーズ・カラマーゾフ』(브라더스 까라마조프, Brothers Karamazov) @ Daehakro Ja-U Theatre, Seoul《2020.2.29ソワレ》

ミュージカル『ブラザーズ・カラマーゾフ』(브라더스 까라마조프, Brothers Karamazov) @ Daehakro Ja-U Theatre, Seoul《2020.2.29ソワレ》

 フョードル:チェ・ヨンウさん
 ドミートリィ:イ・ヒョンフンさん
 イヴァン:アン・ジェヨンさん
 アリョーシャ:キム・ジオンさん
 スメルジャコフ:パク・ジュニさん

 キャストを前回と少し変えて2回目の観劇。長男ドミートリィ役のヒョンフンさんは本作がミュージカル初出演だということを知ってびっくり。何も知らなければ普通に演劇もミュージカルも両方出演するハイブリッドな俳優さんだと勝手に思い込んでいたと思います。構成や演出ひとつひとつに意味が込められていそうな本作。たった2回の観劇では消化できるわけもなく。中毒性が高い作品でぜひまた観てみたい作品です。

March - 3月

コンサート『ジーザス・クライスト・スーパースター』(지저스 크라이스트 수퍼스타 콘서트) @ LG Art Center, Seoul《2020.3.1マチネ》

ナショナル・シアター・ライブ『リーマン・トリロジー』(The Lehman Trilogy)《2020.3.7》

ナショナル・シアター・ライブ『フリーバッグ』(Fleabag)《2020.3.19》


ナショナル・シアター・ライブ『フリーバッグ』予告編
 

 TOHOシネマズの日本橋で『フリーバッグ』上演最終回に滑り込みで観てきました。前情報通りいわゆる”Dirty”な笑い満載でかなり声を出して笑ったのですが、観劇後に後をひく余韻が結構ずーんとしんどい感じなのが印象的でした。それは主人公から感じる「愛されたい」という渇望に私が生きづらさを感じてしまうから。演出家兼主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジさんは凄くセンスのある上手い役者さんだと思います。彼女の役名がエンドロールで”Fleabag”とクレジットされているのには唸らされました。

2020年累計観劇回数:19回(15演目)

2020年下期の観劇記録はこちらから  

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